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 透琉くんが入院して、十日が過ぎた。
 毎日仕事帰りにお見舞いに行き、土日もほぼ病院で付き添って過ごした。

 毎日透琉くんと会えるなんて、まるで夢みたいだ。
 などとちょっと嬉しく思ってしまう自分を戒める。

 透琉くんの仕事復帰を待ち望んでいる人はたくさんいる。

 毎日山のように届くファンレターや差し入れを見てもそれを実感するし、やってくる人たちを見ても、それは透琉くんだけの問題ではないのだと思い知らされる。

 透琉くんが休んでいる間、ぐんちゃんが一人で二人分頑張っているし、元々透琉くんがピンで受けていた仕事はキャンセルせざるを得ないため、永原さんが頭を下げて回っているらしい。

 透琉くんの入院期間は二週間だけど、骨折は全治二ヶ月。

 松葉杖なしで歩けるようになるまで、仕事の幅が狭まるのは免れない。
 波に乗っているとーぐんは、今や稼ぎ頭だ。事務所にしてみたら、大打撃だと思う。

 それは単に、休業期間中の問題ではない。
 あの「病院抜け出し夜遊び」報道から発展したゴシップが広がって、透琉くんのイメージが下げられてしまったこともだ。

 大物俳優の高山さんを怒らせたというのはどうやら事実で、謝罪しに行くも会ってもらえなかったらしい。
 そして、事故に関わったという俳優さんとの確執や、助けの手を拒絶してわざと転落したという噂など、週刊誌は好き勝手なことを書く。


「誰だよ、この『某プロダクション関係者』って。そんな奴いねーだろ」

 ベッド脇の椅子に腰掛け、しかめっ面で週刊誌を読んでいたぐんちゃんが一人呟いた。
 そしてそれをベッドに放り置き、私に気付いてばつの悪そうな顔をした。

「透琉かと思った、すみません」