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 透琉くんが無事退院して一週間後に、岩崎悠大から電話があった。
 高山さんとの面会をセッティングしてくれたと言う。

 指定されたのは、土曜の夜。
 都内のマンション。

 退院してからの透琉くんはまた忙しくて、土日も仕事だ。
 ギプスはまだ外れていないけれど、歩いたり走ったりしなくていい仕事はほぼこなしている。
 漫才の舞台にも早速立って、怪我もゴシップも笑ってネタにしている。

 それがまた高山さんの気に障らないだろうかと、ヒヤヒヤしてしまう。


「着いたら電話して」

 と岩崎悠大は言った。

 マンションの建物自体は分かりやすい立地で、遠目にも分かるほどの高層高級マンションだ。
 そのエントランス近くで岩崎悠大に電話をかけて、入り口のセキュリティロックを二箇所解いてもらった。

 ホテルみたいな大理石調のロビーを抜け、下りてきたエレベーターに乗って、止まった階で下りた。

 そこで岩崎悠大が待っていた。

 すらりと伸びた背に、さらりと着こなした半袖のカットソー。
 前に病院で会ったときと髪色が違う。どことなく雰囲気も。

「いらっしゃい、迷わず来れたね」

 印象的なアーモンド型の瞳も、前は真っ黒だったのに今日は琥珀色だ。

「……岩崎さん、ですよね?」

 確認すると、怪訝そうな顔をされた。

「そうだよ。他の誰に見えるの?」

「……双子とか?」

「面白いこと言うね。まあ、役者には色んな顔があるってことだよ。役作りの一環」