ーー学校へ着くと私は急いで教室へと向かった。


その理由は、顔。


頬の緩む顔を誰にも見られないようにと早く隠したかったから。


教室に着くと、自分の席に座り頬が緩むのを制御するのに必死だった。


意識してないと口角が上がってしまう口元。


両手で頬杖をつくことでそれをなんとか隠している。そんな状況が今。


まだ、誰も居ない時間に来ててよかった。



こんな姿、誰にも見せられない。


こんな、締まりのない顔。お兄ちゃんじゃないんだから。


誰にも見せられない。


まずは京子が来るまでにこの緩みっぱなしの顔をなんとかしないとだ。



「…ふふっ」



それでも、無意識の内に溢れてしまう笑み。


本当、よかった。秋月くんが協力してくれて。



あの時、秋月くんが去ってしまう前にと慌てていた。


今言わないで、いつ言うのかと。


そう思ったら、言わずにはいられなかった。


『私の彼氏のフリをして』と。


自分で自分がこんなに行動力があったのかと、驚いたのもある。


しかし、それ以上に秋月くんが。


秋月くんが私の頼みを承諾してくれたことに対して驚いた。