心奈side
「ふう〜、疲れた〜」
電車に乗った途端出る溜め息。
結局あれから1時間も学校にいた。
もうお腹ぺこぺこ!
「ねえ、ご飯食べない?
あたし、お母さんが心結の入学式だから、ご飯適当に済ませてって言われてるんだ〜」
「いいね、それ!
確か駅の近くに新しくカフェできたし、そこ行きたい!」
りこはノリノリだった。
「夏澄は?」
「ごめん、あたしはパス!」
申し訳なさそうに、でも楽しそうにしてる夏澄。
「おっ?まぁーさぁーかぁー?」
この様子を見て、あたしたちは悟ったのだ。
「宇海ちゃんとデートかぁ〜?」
りこがそう言った途端、顔を真っ赤にする夏澄。
「まあ、はい、そうです////」
夏澄には、高畑宇海(たかはたうみ)という、彼氏がいる。
家が隣同士で、赤ちゃんからずっと一緒に居る幼なじみで、中2から付き合っている。
宇海は違う高校に進学したから、こうしてデートするのはなかなかない機会だ。
「楽しんで来いよ〜?」
「うん♪」
そう言って照れくさそうに笑う夏澄は、最高に可愛かった。
もともと可愛い顔してるのに、ますます可愛くなっている。
今だって、大きな目を鏡で確認して、腰より少し上まである綺麗な黒髪を念入りに整えている。
やっぱ恋する乙女って可愛くなるのね。
「やばー!ここちゃん、りこも恋したい!」
「大丈夫、りこちゃんならすぐ彼氏できるから」
少し身長が小さめで、童顔なりこはお人形さんみたいだから、かなりモテる。
こんなこと言ってるけど、多分ゴールデンウィーク前には彼氏できちゃいそうだ。
そしたらまたあたしだけフリーかぁ〜。
そう言えば、愛理は彼氏居るのかな?
明日聞いてみよう。
「あっ、着いたよ」
りこがそう言ったので、あたしは電車を降りた。