「生理が……来ないの……」





誰も居ないバス停で、彼氏に告げた。




高校生カップルの朝の挨拶の代わりには

重すぎる言葉だった。



昨日までの彼氏は


私が何を話しても無関心な態度をとってたのに


今の言葉に対してはすぐに反応した。




彼氏は避妊した事がなかった……。




私だって


そう簡単には妊娠しないと思っていたから許してた……。



心当たりがある彼氏は私の事を見れずに

押し黙って

ただ声を詰まらせていた。



私は表情を曇らせたまま、ただ佇むしか出来なかった。



私が生理不順に気付いたのは数日前だった。



それまで順調に来ていた生理が

今では予定より半月も遅れていた……。



私が妊娠したかもって気付いた時


それまで楽しくてカラーだった世界が色を失って白黒に見え始め


今も白黒に見えている。



周りの人の存在や話し声さえ

私とは別世界のものように感じていた。



見る風景感じる風景は、いつもと変わらないのに

私だけみんなと違う世界に行ってしまったようで


ぽつんと独りきりさ迷っていた。



心の中はずっと真っ暗のままで

差し込まない光を求めてもがいていた。



私には、彼氏しか居ない。



いま目の前に居るこの人だけが


私の心に光を照らす事のできる

たった独りの人物だった。



でも、高校1年の15歳で妊娠なんて

世間的には認められない事だし


自分が親になるなんて、想像つかないしあり得ない。


彼氏なんかもってのほかだ。


こんな校則破りの茶髪な遊び人が

子育てするなんて想像すらつかないし


天地が逆さになっても絶対に無謀だ。



妊娠検査はまだしてない。



産婦人科へなんて行った事無いし、妊娠検査をしに一人で行くのは怖い。



だから彼氏に付き添ってもらおうと思った。


私は暗い顔を上げて


視線をそらしたまま茫然としている彼氏を見た。


手を伸ばせば届く距離なのに、どこか遠く感じた。