「木陰が気持ちいい。緑が多くて空気も綺麗だ」
「は! はい……そうですね」


今、わたしはユキセンセと二人で並んで歩いている。

なぜ、そんな状況かというと、事の始まりはこうだ。


『え? 取材の許可ですか……』
『うん。あまりそういうの得意じゃなくて、オレ……』


全員が泥のように眠って起きたあと、ユキセンセがわたしにそうお願いをした。
電話で取材の申し込みをするくらいなら……と、仕方なく引き受けたのはいいのだけど。問題はそのあと。


『撮影しちゃだめな場所とかあるみたいですけど、訪問して見学くらいは大丈夫みたいですよ』
『ありがとう。助かった。じゃあ当日は……』
『俺、無理!』『おれ無理ッス!!』


ユキセンセがわたしから、アシスタントの二人に視線を移すや否や、カズくんとヨシさんの声がハモって返ってきて。

頑なに拒否した二人を前に、ユキセンセの視線がわたしに向けられて、結局「わたしでよかったら」と声を掛ける他なかった、という話。


「うわ……」


緑の隙間から覗いていた洋風の建物に辿り着いたとき、思わず口からそう漏れた。

サワサワとそよぐ風に、心地よく靡く枝葉。その木々に囲まれるように佇んでいる、立派な教会。
立ち止まって首が痛くなるほど見上げた理由は、まるでお城のような、可愛い素敵な景観だったから。

でもこんな場所、確かに婚礼でもなんでもない日に男の人二人とかでくるには抵抗あると思うから、カズくんたちが即答で断ってたのも頷ける。