アシスタントの二人が起きるまで、長い時間をユキセンセと二人きりで過ごすことになった。
でも、なんとなくセンセのことをわかってきた分、緊張とか気まずさとかは感じなくなってた。


そういう心の余裕が出来ると、視野も拡がるもので。

いつから干されてるかわからない洗濯ものを、リビングの隣の和室で畳みながら仕事姿を盗み見る。


原稿用紙と鼻がくっつきそうなくらい近づいて、みたこともないペンを走らせてたり。
そうかと思えば、急に顔をこれでもかというほど、原稿用紙から離してみたり。

ちらっと見えるパソコンの画面にも、同じ絵が映っていて、それをなにやら模様をつけたり? その辺は本当によくわからないけど。


外の生活音が、開けられてる窓から聞こえてくるだけで、ここの世界は静寂だ。


当然、なにかの会話をすることもなく、交わす言葉は必要最低限のことだけ。
でもわたしはそれが不満だなんて思いもしないし、むしろ、それだけの集中力を持続してるユキセンセを、夢中で観察してた。


そのまま時間は過ぎていって、夕方前に、カズくんとヨシさんが再び机に集合した。

昨日と同じ光景、会話。それを見聞きしながら、水回りの掃除をしたり、郵便物を受け取ったり。

することは多くはないけど、普段みない職場を見るのは結構楽しくて。あっという間に夜になる。