香奈はもう何もかもが面倒になっていた。

『お姉ちゃん宿題教えて』

そんな事を考えていると彩未(あみ)が香奈の部屋にノックもせずに入って来た。一瞬で香奈は機嫌を悪くしてしまい彩未を睨むと叫んだ。

『そんなん自分でしいや!それに何時も勝手に入って来るなゆうてるやんか!』

そう言って香奈は彩未を部屋から追い出し開けられないように身体でドアをおさえた。

『お姉ちゃん開けて!お姉ちゃん!』

香奈は部屋の外で泣く彩未が堪らなく鬱陶しくてベッドに行き布団に潜り込んで耳を塞いだ。彩未はシツコく何時までも泣き止まない。紀子はまだ診療所か帰って来ない。両親が建てた診療所は隣り街に有り小さいながらも人気が有るらしく毎日忙しい、紀子は十七時まで診療所にいて良幸のサポートをしてからスーパーで買い物を済ませ帰って来るのでまだだ。香奈は布団を跳ね除けると部屋のドアを開けて何時までも泣いている彩未を一瞥し右手を振り上げて『泣き止まな叩くで』と脅した。

益々泣く声を張り上げる彩未の頭目掛けてその手を振り下ろした。早く泣きやまさないと後が煩い。

『彩未煩い!シツコく泣いてたらまた叩くで!黙りや!』

頭を叩かれた彩未が黙るはずも無く益々酷く泣き出した。彩未は泣きながら香奈の部屋の前にある階段を駆け下りて玄関の前に行くと


『お母さん〜おかぁさん!』

と叫んでいる。

『鬱陶しい』香奈は蹴ってしまおうか考えた。