――眠れない。



鈴虫やコオロギも鳴いている少し肌寒い夜。

暑苦しい季節は過ぎ、過ごしやすい秋を迎えた。

眠るにはうってつけの気温だし、虫の音が心地いい。


それなのに……わたしは眠れない日々を過ごしている。



『眠れない』っていうと少し違うかな。

眠ることはそれなりにできるの。

だけど、眠りが浅いっていうか――わたしの耳にはずっと虫の音が聞こえている。

これって、ものすごく眠りが浅いっていうことだよね。


さっきまで目をつむって、うつらうつらとしていたにもかかわらず、わたしの頭はもう覚醒してしまっている。

ふと頭上に置いているめざまし時計を見ると、まだ1時になったばかり。

たしかベッドに入ったのが0時。


だからまだ1時間しか経っていない。


明日も学校がある。

早く眠らなければいけないのにっ!!


そう思えば思うほど、わたしの思いとは裏腹に、頭はよけいに冴えてくる。



『心臓に近い方を下にして、横向きに寝れば眠りやすくなる』


『足の間に柔らかいクッションを挟んで眠るのも安心できて安眠の効果がある』


たしか何かの健康番組で専門家がそう言っていたっけ……。


そのことを思い出し、寝返りをうって布団の切れ端を太ももに挟んでみる。


う~ん。

多少は寝やすくなったのかな……?




だけど結果はさっきと同じみたい。