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紺の上着を羽織ながら、玄関に向かう。


素敵な旦那を持つ誰かさんのおかげで、無駄に二個ある玄関。

ちなみにキッチンもトイレも二つずつある。

本当に撤去工事もなんもせず、ただただぶち抜いただけなのだ。


「……千晶」


きゅ、と服の袖をさっきから掴んでるうちの子。


「離して?ね?」

「…やぁ」

「やぁってあのね」


振り返った千晶は、いつもより少しだけおしゃれを『させた』

だって人来るし。

おしゃれについて、全くと言っていいほど興味がない千晶。


だけど、俺に愛されたいと言う思いからか、私服はかなり可愛い。

あくまで『本人』の意思ではなく、俺のため。


小さい頃のセンスはかなりよかったから、あのまま育っていれば、きっともっとおしゃれだったんだろうけど。



千晶が好きな、名前がわからない花が散ったワンピース。

白いふわふわのカーディガン。


可愛らしい外見にピッタリの服だ。