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『お客様がお掛けになった電話は、現在電波の届かないところに居られるかーー』


耳に当てた携帯の受話口から、今日何度目かの無機質な音声が聞こえてくる。

それを最後まで聞かずに、溜め息を吐きながら電源ボタンを押した。


「先輩…出てよ……」


学園祭の打ち上げが終わり、家に帰ってから何度か電話を掛けてるけど一向に繋がらない。


早く…早く先輩の声を聞きたいのに…

この不安を打ち消してほしい。

“大丈夫、俺はいなくならないよ”って…
“俺が好きなのは恵里奈だ”って…

そう言ってくれたら、今感じてる絶望感も背徳感も全て忘れてしまえるのに。



並木さんと話した後、カフェに戻ると瀬奈に『心配したんだからね!』と怒られた。

瀬奈は、先輩が彼女といるのを見て私がショックを受けて逃げた、と思ってるらしい。

意味合いは違くとも、あながち間違ってはいない瀬奈の推測にただ苦笑いを零した。