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「お待たせ致しました。アメリカンコーヒーで御座います」


カップから白い湯気が上がる。
それをゆっくりと吸うと、コーヒーの香りが身体中に染み渡ってなんとも気持ちがいい。


「この間はごめんね。私、余計なことを言ったわ。彼女、大丈夫だった?」


平日の昼下がり。
仕事の休憩を使って、メインストリート沿いにあるカフェチェーン店で京子と待ち合わせた。


「ああ、問題ないよ」

「そう。なら良かった」


京子はコーヒーに砂糖とミルクを入れると、俺の分の砂糖を手に取った。


「剛は使わなかったよね。貰うわよ」


京子は甘党で、昔からコーヒーに砂糖を二つ入れる。
俺と付き合ってた時も、今と同じように俺のを勝手に取って入れていたっけ。


「相変わらずだな」

「このコーヒーの苦さだけはいつになっても駄目なのよね」


京子は甘そうなコーヒーを一口飲むと、「美味し」とほっと息を吐いた。