全力で走ったのは、高校生のとき以来かもしれない。


京子に、“恵里奈を愛してる”宣言をした後、俺の腕を掴んでた京子の手を離し路地を一気に駆け抜けた。

恵里奈の姿を探しながらメインストリートを走り、駅前広場につくも、その姿を見つけることが出来ない。


「あいつ…どこ行ったんだよ…」


昔はこれぐらい走っただけじゃ、こんなに息は上がらなかったのにな。

恵里奈との年の差を、こういう時も感じてしまう。


「何やってんすか?」


膝に手を当てて呼吸を整えていると、ぶっきら棒な声が聞こえた。

振り返ると、大学帰りの卓人が不機嫌そうに眉を寄せていた。

不機嫌そう、というか、こいつの仏頂面はいつものことなんだが。
彼女の前だと柔らかい表情になるんだよな。


「これから迎えか?」


時計を見ると、もうそろそろ柚姫ちゃんのバイトが終わる時間だ。
卓人は、柚姫ちゃんとバイトが被らない日は絶対に迎えに来る。

マメというか、本当に彼女を大事にしてて、見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいだ。