キスの後、額と額をくっつけて微笑み合うと、私達は手を繋いで路地を出た。

今まで繋いだことのない手を、今は当たり前に繋いでくれてることが嬉しくて、気を抜くと口元が緩んでしまう。



「この分だと、映画間に合わないな…」


「ごめんな、俺のせいで」と申し訳なさそうに私を見る先輩に、繋いだ手をぎゅっと握り締めた。


「私は先輩の可愛らしい新たな一面が見れて嬉しかったですよ?」


先輩がヤキモチを焼いてくれた。
先輩のキスは優しくて、手は凄く温かいことを知った。

映画よりも先輩とたくさんの距離を縮められたことの方が、私は何倍も何倍も嬉しいんだ。


先輩は心なしか、少し顔を赤くすると「後で覚悟しろよ?」とイタズラな笑みを浮かべた。



カフェを出てから映画館までの数十分の道のりは、人生で一番といっていいぐらい幸せな時間で。

今、先輩の隣りを歩いてるのは私。

この手も、この唇も、“今”も、先輩の全てが、私だけのもの。


この時があれば、私は二番目でもいい…


そう思ってしまうぐらい、私は“先輩”という世界にどっぷりと浸かっていた。