「俺、今は結婚する気ねぇから。じゃあな」

『あっ!剛!待ちなーー』


朝、7時。
母親からの電話を強引に切ると、俺は携帯をベッドの隅に放り投げた。


ったく、朝っぱらからくだらないことで電話してくんなよ。

はあ、と盛大なため息を吐くと、俺の横でスヤスヤと寝息を立てる愛しい女の頬をそっと撫でる。

今日は遅番で、朝は比較的ゆっくり出来る。
仕事に行くまでの時間、こいつとゆっくり過ごそうと思ってたのにとんだ邪魔が入ってしまった。


電話の内容は、見合い話。
今年30になる俺を心配した母親が、最近やたらと話を持ってくる。

心配してくれてるのは有難い。

だけど、俺は結婚する気なんて更々ない。


「んん……」


そう、やっと手に入れた最愛の女ーー、
恵里奈以外とは。