カラン、カラン。

「すみません。今日はもう閉店…って、剛と恵里奈ちゃんじゃない!どうしたの?」


私達がカフェに入ると、カウンターで仕事をしていたハルさんが目を見開いて立ち上がった。


「悪い。キッチン使うぞ」

「え?それはいいけど…」

「お前、そこ座ってろ」


並木さんは私をカウンターに座るように促すと、すぐにキッチンに入っていく。


「何かあったの?」


私達の間に流れる重苦しい空気に気付いたハルさんは、並木さんがいなくなるとすぐさま私に駆け寄ってきた。

何事かと、心配そうに眉を下げるハルさん。


「私、我が儘言っちゃって…並木さんを怒らせてしまったみたいで…」

「恵里奈ちゃん…私、余計なことしちゃったかしら。二人が仲良くなる機会になればと思ったんだけど」

「いえ、そんなことないです。最初は戸惑ったけど、今日一日並木さんといられて、良い思い出が出来ました。悪いのは全部私です」