【礼奈side】

 どう考えても、あの綺麗な人はただの知り合いなんかじゃない、創ちゃんの彼女に決まってる。

 それくらい、中学生の私にだってわかるんだから。

 あの人は大人で、すっごい美人で私の勝ち目なんかない。

「ふえっ……ふえっ……」

 ベッドに伏せて泣いていたら、急にドアが開いた。ドスンドスンと足音が近付き、お兄ちゃんが私を見下ろしている。

「お前、まだ泣いてるのか? 創のことを殴って悪かったよ。ただ俺は、礼奈のことが心配で心配でたまらないんだ。礼奈はまだ中学生だし、何かあったら……」

「何かって、何よ。お兄ちゃんのせいだからね。お兄ちゃんなんか大嫌い。創ちゃんに嫌われたんだから。もう……許してあげない。絶交だから」

 私はお兄ちゃんに八つ当たりし、ベッドで泣きじゃくる。

「……まじかよ」

 ベッドの横に突っ立ったまま、あの怖いお兄ちゃんがオタオタしてる。

「もう部屋から出てって。お兄ちゃんの顔なんかみたくないんだから」

 私は泣きながらお兄ちゃんを部屋から追い出した。お兄ちゃんは困り果てた顔で私を見た。

 大好きな創ちゃん。
 小学生の時から、ずっとずっと好きだった。

 創ちゃんはお兄ちゃんの親友で、私の憧れの人。本当のお兄ちゃんよりも、かっこよくて優しいお兄ちゃんだった。

 中学生になって、やっと自分の想いを伝えることができたのに。

 彼女の出現で、私の恋は終わった。

 創ちゃんとは、もう……バイバイだよ。