「おれ、好きなやつできたかも…」
はじめまして。私は三浦 咲です。
ごくごくフツーのJKです。
ただいま幼馴染と放課後に楽しく会話しているところ。そう、楽しく…
「ぇえっ⁉︎」
今、何て言ったの?
好き…とか言ったよね?え?
誰が好きなの⁉︎
わざわざ私に言ってきたって事は…
まさかっ…私だったり⁉︎
いや〜照れるなぁww
「隣のクラスの子なんだけどさ、」
あ…私じゃないんだ。まぁね。
自意識過剰すぎでしたね。ハイ。
明らかにテンションを落とす私。
そう。私はこいつが好きなのだ。
「だっ…誰?私の知ってる子?」
聞くのは少々怖いけど、
聞かなくっても話し出すだろうから、
私から聞いてあげることにした。
なんかすんごい緊張する…
「小川美玲ちゃんって子。知ってる?」
頬を少し赤らめて話す限り、
相当その子の事が好きなんだろう。
私にとっては、ただの苦痛でしか
ないけどね…
私とこいつは、小さい頃からよく
一緒に遊んでいた。今もそうだ。
でも、こいつに恋バナなんか
されたことなかったし、
勿論したこともない。
「知ってるよ。数年前引っ越して来た子でしょ?」
美人なんでしょ?と、付け加えそうになったけど、こいつの口から
『うん』という言葉を聞くのが怖くて、
言わなかった。
「知ってたんだ〜!その子美人だよな!優しいし完璧⭐️」
こいつっ…人の気も知らないで…
だんだん怒りが込み上げてくる。
こいつのテンションはどんどん
上がっていく一方。
こんな話、男にすればいいじゃん⁉︎
「でさっ!その子のメアド聞いて来てくれね⁉︎昼飯おごるからさっ‼︎」
うわ…本当最悪じゃんコレ…
だから私に聞いたのか…
「それって、私にあんたの恋の応援しろって事?」
少々怒りモード。
流石の私も、ほぼ初対面の相手に
いきなりメアド聞き出せるような
度胸は無い。
それ以上に、失恋なら失恋だと
はっきりさせてほしいから、
わざとそんな言葉を選んだ。
「うん…そういうことになるのかな?」
やっぱり…自分から聞いたくせに
ショックがデカイ。なんか泣きそう。
「分かった。聞いてみるから…」
そう言って、私は教室を出ようとした。
これ以上ここにいたら
泣き出してしまいそうだから。
「咲?元気ないよ?何かあったか?俺でよかったら相談していいんだぜ?」
立ち止まってしまった。
ここで立ち止まったら、
完全に泣いてしまう。
「大丈夫っ…なんでもないからっ…」
振り返る事なく返した返事は、
情けないことに少しだけ
震えていた。
そのまま教室を出て、
なんとなく廊下を歩いてみる。
涙が出てきた。どうしよう…
こんな姿、あいつにでも見られたら…
「えっ、咲ちゃんどうしたの⁉︎」
あ。タイミング良すぎ…どうしよ。
「なんでもないからっ!ほっといて‼︎」
私は龍介に背を向けて言った。
こいつは…そういえばまだ
律のこと紹介してなかったや。
私の幼馴染の律の親友、龍介だ。
入学式の時に私に一目惚れしたらしく、
結構な頻度で告られている。
正直うっとうしい。
全く、私の何処がいいんだか…
「ほっとけるわけねぇだろ?」
と、言われた瞬間、
肩をつかまれ、
ムリヤリ龍介の方を向かされる。
「見っ…見ないで…よぉお…」
普段強気なくせに、
こんな姿を見られたらもう終わりだ。
ふと、ギュッと何かに包まれた。
少し反応が遅れたが、
すぐにこの、龍介に抱きつかれている、
という状況を理解した。
「ばっ…馬鹿っ‼︎皆がっ…みてるぅ…
はなしてよぉ…ばかぁっ…!」
なぜだか涙が次々と出てくる。
これじゃあまるで子供みたいじゃん…
いつもだったら蹴り飛ばしてるのに、
今は身動きがとれなかった。むしろ、
もう少しこのままでいたかった。
「バカッ……」