伊賀の里では、織田の攻撃に備え、戦の準備が進められていた。
血気盛んな若者達も戦闘服に身を固め、刀の手入れに余念がない。
「おい、成葉」
戦の準備をする者達と共に、鞘から抜いた刀を真剣な眼差しで見つめている成葉(ナルハ)の所に、幼なじみの祥之介(ショウノスケ)が来て声を掛けた。
成葉は刀から目を逸らすことなく、答える。
「なんだ、祥之介」
「なんだじゃないだろっ」
祥之介は少し苛立った様子で成葉の正面にストッと座り、パッと成葉の持っている刀を取り上げ、サッと鞘へ収めた。
「何をするっ」
今度は成葉がイラッとして睨みつけるように祥之介を見つめた。
「こんな所で何してるんだ」
「何って、織田との戦に備えてるに決まってるじゃないか。刀を返えせ」
「前からそうじゃないかと思ってたけど、やっぱり、馬鹿かお前は」
「なっ、何だ、その言い方。私の何処が馬鹿なんだっ」
「回りを見てみろ」
祥之介に言われて成葉は回りを見渡してみる。
「…皆、戦に備えて準備してるじゃないか」
「ああ、してるさ、『男』はな」
祥之介が言う通り、戦の支度を整えているのは男ばかりだ。
成葉の他には戦闘服に身を包んでいる女はいない。