翌日――。


「えぇ、急で申し訳ないのは重々承知なんですけど……そこをなんとか――あ!」


 プープーと無機質に通話が切れた音が受話器からすると、奏は肩を落として電話を戻した。


(ここもだめか……)


 奏は、赤ペンでまた×印を書き込む。また一つ、また一つと×印が増えていくたびに重いため息が出る。


 御堂のコンサートを開演する場所を確保するため、奏は仕事の合間を縫って朝から許可取りの電話をかけて回っていたが、日時がすでに明日に迫っているせいか、どこもいい返事はもらうことはできなかった。


(どうしよう……)


 御堂への想いが募れば募るほど、今の状況に焦燥感が増していく。


 今夜、仕事が終わってから奏は、明日打ち合わせのために御堂のマンションへ行くことになっている。けれど、この状況ではとても御堂にいい報告はできそうもない。


(今夜までにちゃんと企画を整えなきゃならないのに……)


「青山」


 ふいに背後から名前を呼ばれると、奏は机に突っ伏していた頭を上げた。