翌日――。


(はぁぁ……会社、行きたくない)


 昨晩は色々なことが重なり一睡もできず、鉛のような身体を引きずって出社した。


 自分以外の全ての人が身軽に見えてしまう。囚人のように鉄の塊を両足に括りつけられたような感覚が、奏をさらに落胆させた。


(柴野さん、まだ来てないのかな……)


 社内恋愛のリスクは破局した後だ。


 一体どんな顔をして柴野に会えばいいのかと、奏はひとりで悶々としていた。


 自意識過剰だと思いながらオフィスに入ると、無意識に奏は柴野の姿を探した。


(もう! 仕事は仕事! ちゃんと割り切らなきゃ……柴野さんだって……ちゃんとわかってるよ)


 奏は、雑念を振り切るようにブンブンと首を振ると、しゃきっと表情を整えた。