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時は過ぎ、肌寒い季節がやってきた。

私は相変わらず主人と会わせてもらえぬまま雑用したり、閉じ込められたりの毎日。




「ハァ」



――最近ため息つきすぎかもしれない。




そんなことをモヤモヤ考えながら
今日も勝手場で隊士の朝餉を作っていれば、珍しいことに声をかけられた。




「おい、女子」




口を聞いても良いのだろうか、と一瞬迷ったが返事をしないのも失礼な事。
小さな声で「はい」とだけ返す。




男達は芹沢さんの生前よく共に行動していたので覚えていた。

名前までは知らないが。




「お前、芹沢さんと親しくしていた者だろう」




今更そんなことか、この数ヶ月話す機会は無くはなかった筈なのに。




「そうですが」




「ならば、近藤が憎くはないか」




「!」




仮にも、新選組の屯所内で
局長の悪口とは聞いて呆れる。




確かに憎くないと言えば嘘になるが
不用意に口に出すものではない。




「それを私に聞いてどうしたいのですか」




相手が帯刀していることもあり声が震える。
恐る恐る問えば男達は口で弧を描いた。




「何、革命に一役買ってもらおうと思ってな」




「革命....?」




「そうだ、ここ数ヶ月お前を見ていたが
ここに居たい訳ではないのだろう

身内でも人質に取られたか」




ドキリと心の臓が跳ねる。
私の処遇が決められる際に土方が「人質」という単語を発していたのを思い出した。




私にとっての大事な人、つまり甘味処の主人だ。




黙ってしまったのを図星ととったのか、彼らはは私に手を差し出した。




「さぁ、手を取れ女子

芹沢さんの仇だ....奴らを根絶やしにしてやろうぞ」




「........」




急に襲ってきた、大切な人の死の予感に私の手は震える。




手を差し出すわけでもなく、断るわけでもなくただ震えていれば誰かが近づいてきた。