「ユノ様、朝ですよ!おはようございます!」

「んっ・・・?」

「今日はダンスの練習が午前中にあります! 早く起きてください」


シャーっとカーテンを開ける音ともに、朝日が眩しくゆのを照らす。


「おはよう、ミーシャ」



ミーシャはオズヴェルドが決めたゆの専属のメイド。

ピンクの髪に、薄紫の・・・まるでアメジストのような瞳を持つ、可愛らしくも頼りになる女の子だ。




オズヴェルドの側室となってから、ゆのはオズヴェルドに一度も会っていない。
ゆのが帰る方法を探してくれているらしく、忙しいようだ。

ゆのは毎日、この国の貴族の御令嬢がこなす勉学をレヴァノンから学ぶ生活をしている。

今日は初めてのダンスレッスンらしい。


ゆのは半分寝ぼけながらも、ミーシャが用意してくれたワンピースを着た。

ゆののためとあてられた部屋にはドレスがたくさんあったのだが、そんな服は今まで着たことがない。

なんだか気後れしてしまったゆのは、普通の動きやすい服はないかとミーシャに相談し、側室が普通の運動を重視した服というのは・・・ということで、ワンピースを毎日着ているのだ。


「ユノ様の髪は本当にお綺麗ですね」


ワンピースにあわせた髪型もミーシャがいつもセットしてくれる。


「ありがとう」


ゆのから見ればただの黒髪。しかしここは異世界。漆黒のゆのの髪は珍しく、とても美しく感じられるのだ。


「サラサラしていますし、とても長い髪ですからアレンジがたくさんできますね!」

「いつもミーシャが可愛くしてくれるから、髪は切らないでおくね」


ゆのの髪は、背中の半ばほどまであるサラサラストレート。

いろいろと飾ってもらうが、基本的にはポニーテールにしてもらっている。





身支度を済ませて部屋の扉を開けると、いつもと同じ人物が頭を下げた。


「おはようございます、ユノ様。食堂へお連れします」

「ありがとう、オルフェ」


オルフェ・ヴィクターはオズヴェルドが信頼する騎士団の団長で、ゆのを守護する任務を与えられていた。

本当は側室でもなんでもないのに。こんなふうに守ってもらうのがゆのは申し訳なかった。

ゆのが本当の側室ではないということは、オズヴェルドとレヴァノンしか知らない。

ミーシャもオルフェも、本当にオズヴェルドの側室だと思っているから、居心地が悪い。

この世界にはいない容姿を持つ私にそれを言及してこないのはーーー

流石王子様の信頼する人達である、としか言い様がない。