梅酒はグラスで飲むのが好き。



透明か、または擦りガラス。とにかく色の入っていないグラスがいい。



信楽焼だか美濃焼だか知らないけど、こんな黒い焼き締めのカップに入ってたら梅酒の色が全然わからないじゃない。せっかくの味も半減だ。



ぐいっとカップをあおったら、大きな氷が鼻の頭を直撃した。



「奈緒さん、温かいお茶飲みませんか?」



おしぼりで鼻の頭を拭う私に微笑みかけたのは、ひとつ年下の後輩である武田君。



つんつんと艶っぽく立たせた髪が、若さを感じさせる二十六歳。はっきりした目鼻立ちのキリッとした顔に、子犬のような黒くて大きな目がかわいい。



「お茶? まだコレ飲んでるのに?」
「それを飲み終わってからでいいですよ、あ、お寿司が来たけど食べます?」



手にしたカップを揺らして視線を送ってみせると、武田君が目を細めた。



ほんのりと赤くなった頬が武田君らしくない。いつも宴会では、顔色は変わらなかったはずなのに。