──数日後、通路を歩いているベルハースにスーツ姿の男が近づく。

「視察? 今日だったかね」

 以前に新しい視察を希望したがどうなっただろうか。

 施設の入り口に向かう歩みは心持ち足早になる。

「ん?」

 ベルハースは落ち着きのない青年に目が留まる。

 見慣れない青年だ。

 まさか、あれが今回の視察なのか。眉間にしわを寄せて頭を抱えた。

 三十代前の青年は、グレーのスーツに身を包み平静を装ってはいるようだがその手足は何かを待ちわびるようにそわそわしていた。

 赤みがかった短髪は清潔に整えられ、青い瞳は初めて見る施設をまじまじと見回していた。