「よう、パッチワーク。元気だったか?」

 三歳になるベリルは、さして関心も無いような目でその男を見つめた。

 小豆色のスーツを身にまとい、嬰児(みどりご)に下品な笑みで声を掛ける。

 おおよそ似合っているとも思えないスーツは、仕事だからと着ているにすぎない事が窺えた。

「チッ、相変わらず可愛げのねぇガキ」

 無言のままの幼児に舌打ちする。

「ハンス君、そんな事は専門家たちの前では言わないでくれたまえよ」

「解ってますよ、教授」

 軽薄に応えてベルハースに目を向けると、とりあえずの仕事のように口を開く。

「異常は無いですか?」

 定期的に訪れる視察の人間だが、彼で二人目だ。

 ベルハースは前任の男が気に入らなくて代えるように申請し、後任としてやってきたこの男にも不満が募る。