そろりそろりと周囲の様子を伺いながら、誰にも気づかれないように魁さんが居る部屋へと向かう。

ドキドキと高鳴る胸を押さえながら進んで行けば、やっとの思いで魁さんの部屋の前に辿り着いた。


───何だか、悪い事をしているみたい……


気持ちを落ち着けるように、一度深呼吸をする。

キョロキョロと辺りを見回して、誰も居ない事を確認してから、いざノックしようとした手を、扉に触れる寸前に止めた。


「………………」


こういう時って、ノックをしてもいいものなんだろうか?

時間は深夜二時を過ぎていて。

こんな時間に男の人の部屋に来るのもなんだけど、具合が悪い魁さんは眠っているかもしれない。

でも、無断で入るのは……

折角、部屋の前まで辿り着いたのに、ノックをした方がいいのかを真剣に悩む事数十秒。


「よしっ!」


取り敢えず、控えめにノックをしてみようと決めて扉に手を伸ばしたけれど……

ノックをする前にカチャリと開いた扉に驚いて、ドキリと一際大きく心臓が音を立てた。