(side:アルバート)


兄さんから電話が掛かってきたのは、ほんの数分前。


「ふぅ…やっと、終わった……」


───これで、マリアとゆっくり休日を過ごす事が出来るな。


今年最後の仕事を終えて、ホッと息を吐いたのも束の間。

胸ポケットから聞こえてきた、スマホの着信音に眉を寄せた。


スマホを取り出し、画面を見れば……

案の定、我が麗しのお兄様で。


今度は何を言い出すんだろうかと、戦々恐々としながら画面に映る通話ボタンに指で触れる。


「Hello.」


『──…俺だ』


うん、知ってる。

いつもと同じ遣り取りに、思わず苦笑い。

今の時間ならば、兄さんはマリアを連れてイギリスに向かっている筈だから……

プライベートジェットの衛星電話からか?


「あれ? 兄さん、もうイギリスに着いたの?」


軽い冗談のつもりで言ったのに


『そんなわけないだろう』


至って真面目な答えが返ってくる。