時計の針は、夜9時を過ぎた。

残っているのは、祥子(ショウコ)と俊樹(トシキ)の二人だけ。

他は皆、定時で上がっていった。

俊樹は祥子の上司で、残業は毎日のように当たり前。

祥子は、今日中に終わらせなければいけない書類があり残業をすることに。

お互い一言も喋ることなく、ただキーボードを叩く音だけが狭い空間に響いた。

そんな中、カラカラと音が聞こえ祥子が顔を上げれば、俊樹が椅子から立ち上がり廊下に出て行くところだった。

トイレか、タバコかな。

なんて思いながら祥子は、またパソコンに向かい画面と睨めっこしていると、突然“コトン”と机に何かが置かれる音がした。