まだまだ寒さの和らがない、三月。


強豪校剣里高校では、中年の体育教師にして男子バスケ部の顧問宮角(みやかど)の怒声が響き渡っていた。


「だから!これは何だと聞いているんだ!」


手に持ったiPhoneのそう大きくない画面には、一ヶ月前に行われたスネイク・オーバドゥとの激戦が映っている。


あの時は、目先の強敵と戦うことしかなかったが、草試合……しかも、負けた試合が巡り巡って、今になって顧問に情報が入ろうとは思わず、心海 大空(ここみ だいすけ)は頭を抱える。


「名門校のうちの恥さらしだ!しかも、お前達三人はうちのレギュラーユニフォームを着る選手!何故このようなちゃらけた集団に負けているのだ!」


「……すみません」


いつも顧問が怒ったときには黙りを決め込む佐久間と虎次郎。今回も例外は無い。


代表していつも謝るのは大空の仕事だ。


かなり損なポジションである自分を心で哀れみながら、前で腕組みした手をちょろちょろ、と動かして気を紛らす。


「大体お前達は……!」


次にどんな怒りが向けられるのか、うんざりして白目を向きそうな大空は、ぼやぁ、と視線を飛ばし、虚ろな目になる。


こういう時は、うん。声が聞こえなくなった時に謝っときゃよし。


大空はそう思いながら、既に脳みそオフモードに入ってる佐久間と虎次郎に続いた。