「あら、お疲れですか?」


ある日の昼下がり。


桐生さんに声をかけられて我に返った。


「あー、ちょっと考え事してました」


「そう。深刻なもの?」


「や、深刻ではないっすけど。
 なんか気になることがあって」


歯切れの悪い言い方を
したような気がする。


きょとんとする桐生さんを見て
そう思った。


桐生さんは俺をじっと見つめて。口を開いた。


「気になることですか。
 もしかして黒川くんのこと?」


「あー、いや。まあそうなんすけど……」


「気になるなら
 調べてみる方がいいわね。何事も」




調べてみる、か。


でも、知ってはいけないような気もする。


俺はずっと、成瀬の言った
言葉の意味を考えていた。


宗祐が同志?


なんの同志だ?


あの花の意味、切望、
あなたを待っています……。


最近、宗祐の体調が芳しくない。


それと比例して、成瀬もなんだか
青白くなったというか、


まるで死人のような顔つきになっていた。


成瀬は宗祐の部屋に訪れるたびに、
不敵な笑みを浮かべるようになった。


そして俺をじっと見つめ、
何も言わずに去って行く。


謎過ぎる行動にも
少し慣れてきた頃だった。











「えっ……手術!?」


「そうです。最近発作も多く
 苦しそうなので、
 早めに手術をしましょう」


「それって、俺が?」


「はい。神崎医師が執刀医ですから」


桐生さんが唐突に話題を切り出した。


「開心術をしましょう」