「え!? ハルちゃん、電車乗ったことないの!?」



梨乃ちゃんが驚いたように、わたしを見た。



そして、亜矢ちゃんが、



「そりゃ、ビックリだ」



と、目を点にした。



「陽菜(はるな)んちって、駅から、すぐじゃん?」



しーちゃんが言った。

確かにわたしの家は、駅まで徒歩5分ないくらいで、かなり近い方だと思う。



「あ、でも、新幹線には乗ったことがあるよ」



「新幹線まで、どうやって行くの?」



「車」



梨乃ちゃん、亜矢ちゃんがため息を吐いた。



「けっこう、距離あるのに、車かぁ」

「さすが、お嬢さまは違うねぇ~」



嫌みではなく、感心したように言う2人。



「ハルちゃんちって、車だって、運転手さん付きでしょ」



「あ、うん」



答えると、しーちゃんも一緒に、また、



「お嬢さまだわ、やっぱ」



とか、三人でうんうん頷き合う。



「えっとね、でも、お兄ちゃんは、普通に電車乗るし」



と、反論したけど、後はもう、



「今時、天然記念物みたい」

「ハルちゃん、いつまでも、そのままでいてね」

「今度、運転手付きの車に乗せてね」



とか、梨乃ちゃん、亜矢ちゃんに頭をなで回されて、わたしの言葉は聞いてもらえなかった。



電車に乗ったことがないのは、お嬢さまとかじゃなく、

わたしが生まれつき、心臓が悪くて、

ほとんど出かけないからだと言いたかったけど、

そんなことより、「天然記念物」が気になって。



けっきょく、何も言えなかった。