「お姉ちゃんこれ配っといて。」



帰りのホームルームの前に担任に呼ばれたと思ったら、ナチュラルにお姉ちゃんと呼ばれていることに気付いた。


「なぜそれを。」

「みんな言ってたぞ。三船はみんなのお姉ちゃんなんだーって。お前何したんだ?」



黒い短髪をさわやかに遊ばせ、黒縁めがねが様になっている若い担任はノリもいいしかっこいいとみんなの人気者だが、あたしはどうも信用しきっていない。


なぜってこの笑顔が胡散臭いからだ。

完全に猫かぶってる雰囲気。

なぜか誠にも気をつけろとくぎを刺された。



「ちょっとクラスでのごたごたを解決しただけですよ。」


「山城と本村だってな。みんな超楽しそうに話してたぞ。よほどのことしたんだろ。」



やっぱある程度なにあったか知ってんじゃんかよ。



「それ、配ればいいんですね。さっさとかしてください。ちゃっちゃと配っちゃうんで。」


担任の手の中のプリントをひったくり、素早く配って席についてやった。



「お姉ちゃんが冷たいよー。」

そんなことを言ってクラスの笑いと取っている担任のことは思いっきり睨んでやった。