小学5年生の時、あたしはおじいちゃんが亡くなってひとり暮らしになったおばあちゃんの家の近くに引っ越して来た。

父方は数年前に亡くなっていたし、仕事に影響もなかったし、よっしゃ行ったろか! ってお父さんが男気を見せてん。



「道越 杏奈です。大阪から来ました。よろしくお願いします」ってベタなセリフを口にして、あたしは緊張で強張っとった顔に笑みを浮かべた。



ザワザワ、と言葉に聞こえへん声たちはみんなして標準語。

同じ日本のはずやのに、この違和感。

なんやこれ。



テレビからならあったけど、クラスメートが関西弁ちゃうとか変な感じ。



休み時間にはクラスの子らに囲まれて、えらいことになってもた。

今まで知らんかったけど、転校生ってめっちゃ疲れるねんなぁ。



「ねぇ、あんちゃんって呼んでいい?」

「ええよー、呼んで呼んで」

「キャー、関西弁、生で聞いたの初めてー!」



あたしは動物園のパンダかなんかか。