「ねぇねぇ、聞いた?BDに新しい幹部が入ったんだって」


「あ、聞いた聞いた。彼氏の友達がBDのメンバーなんだけど、なんでも入ってすぐ幹部になったらしいよ?」


「えー、入ってすぐ幹部になったの?すごーい」


「とにかくすっごい強いらしくてね、しかも、超美形なんだって!」


「うそ、美形なんだ!BDの幹部ってみんな超格好良いよね~。その人名前なんて言うんだろー」


「えっと、確か“レイ”って言ってたよ」


「“レイ”?もしかして“綺麗”の“レイ”?だとしたら名前通りだよね~」



違うよ。“レイ”に漢字なんて無い。

偽名だから漢字なんて必要ないし。


……なんて、わざわざ彼女達に説明なんてしないけど。



──カタン。



さて、と。

今日も呼び出されてることだし“黒神の城”にでも行こうかな。


そう心の中で呟いて、机に掛けてあった鞄を手に持つ。



「え、春名さん、もう帰るの?もうすぐ帰りのHR始まるよ?」

「……あー、今日はバイト早いんだ」



話し掛けてきたのは“レイ”の噂をしていたクラスメイトの女子。

見た目はギャルだけど、性格は割りと大人しめな子達だ。



「あ、そうなんだ。毎日大変だねー。って、あれ、春名さんの彼氏じゃない?」

「……ホントだ。じゃあまた明日ね」

「うん、バイバーイ」

「バイバイ、春名さん」



じゃあ、と軽く手を上げて、廊下で待っている“彼氏”とやらの元へ向かう。