相棒で高速を走って、
数年ぶりに訪れた故郷。


いつもはシーンとしたその故郷は、
警察や消防、自衛隊までもが出揃って
物々しい雰囲気を醸し出してた。


一般の車が入れるのは、限りがあって
規制線が貼られてしまっている、
その前で車を降りて、知り合いが居ないか
規制されている向こう側を覗き込む。


俺の記憶に微かに残るその故郷(ばしょ)は、
暫く帰らぬ間に姿をガラリと変えていた。


総本家がおさめた村が広がる田園地帯。


滅多に降らない雪に、一面覆われてしまって
新雪の場所は、ズボっと足を取られてしまう現状。



関係者以外立ち入り禁止。




大きくそう記された規制線の奥は、
この村の出身者と言うだけでは、
入れそうな状況かはない。




このままいくと、
俺はあの場所に帰ることすら出来ない。


だったら兄貴の札を見せるか……。


徳力の総本家の家のものだと
村の関係者が知れば……。





あんなにも嫌いだった徳力の力も、
こういう時には縋りたくなってしまう俺が存在する。




近くに居る警察官に声をかけて、
安倍村に身内が居るから、中に入れと欲しいと伝えてみるものの
安全確保が出来ないからと、その場所に招き入れるのは渋られてしまった。


その時、地元の消防団の団員が近づいてくる。


年のいった……見知った顔。
その隣にいるのは養父(おやじ)。


警察を無視してわざと大声を出す。



「養父(おやじ)。
 飯沼先生」




確か……養父の隣にいるのは、
昔、面倒見て貰った故郷の保育所時代の所長。


俺自身は、神前悧羅に入学が決まって
保育所を通い続けることは出来なかったけど
それでも……俺にとっては、最初の先生で……。



二人は俺の存在に気がついて、
近づいてくる。


「飛翔、来てくれたのか?」

「はい」


先生が紡いだ言葉その一言。

それに対する俺の答えも愛想ない。



「養父(おやじ)。

 総本家の人間としてここに来た。
 養母さんには泣かれたが」


「だろうな。

 お前がそう決めたなら私は飛翔に従うだけだ。
 お前をお預かりした日からこうなると思ってたよ」



養父はそう言うと先生に何かを耳打ちする。


耳打ちした後、先生がまた警察官らに何かを話すと
警察の態度が一変した。