あんなにも再会に抵抗があった海斗。




あの日、全てを捨てて出て行ったオレを
アイツは責めることすらせずに、
今も変わらないダチとして付き合ってくれる。




大学の間、バイトと勉強に明け暮れて
まともなダチは居なかった。


表面上、話せる奴は多かったけど
腹を割れるほどのヤツは存在しなかった。



だからだろうな。



いつも息が詰まりそうな思いをしてた。




今は……息抜きが出来る場所がある。



ありのままのオレをさらせる場所がある。


それが正直嬉しかった。






研修は順調。

仕事はハードだけど、遣り甲斐はたっぷり。


鷹宮院長の家も住み心地は悪くない。


リズ夫人も、最初に宣言した通り
勇人や千尋君たちと同等にオレに接してくれる。



またオレは、いろんな優しさに触れて
今を生きてる。




そんなオレがアイツの異変に気が付いたのは、
数日前。



いつものように、仕事後の息抜きに
アイツの店を訪ねた。


朝の仕入れと仕込が終わって、
昼休みに入る時間。


いつものようにアイツの店の近くに、
愛車をとめて、店の扉を開ける。




「こんにちはー」


「おぉ、嵩継。
 入れよ」




そうやってオレの方に歩いてくるアイツの足は
やっぱり、今日も少し引きずっている。



数日前も、こうやって尋ねたオレ。


その日は、久しぶりにオレのバイト先の居酒屋夫婦の店で
昼飯。


その後、河川敷でガキ共のサッカーを見てたら、
ボールが運よくオレの足元へ。



懐かしくなって、ボールを蹴りだして
ガキどものコートの中へ。



後を追いかけるようにコートに入って来て走る海斗の走りに
キレがない。