「難しい顔だな? やはり、おまえも浅井菊子さんについては、気になる事があるのか?」


俺が小松の事を考えていたら、兼続はそう受け取ったらしい。


「いや、別にそういう事では……」


正直、菊子さんの事はどうでもいい、というのが今の俺の本音だ。本来は結婚の相手なのだから、もっと関心を示すべきなんだろうけども、とにかく今は小松の事で頭が一杯だ。

ではあるのだが、兼続が何か引っ掛るような言い方をした事に俺はようやく気付いた。


「何か出たのか?」


テーブルの上の茶封筒に目を落としてそう聞くと、果たして兼続は「出た」と言って頷いた。


「何が出たんだ?」

「それはこれから見せるが、結論から言うと、この結婚はやめた方がいいと思う」


兼続は深刻そうな顔で、しかしキッパリとそう言い切った。


「そう言われても困るよ。何が出たのか言ってくれないと……」

「まあ、そうだよな。あまり見せたくはないのだが……」


兼続はおもむろに茶封筒を掴むと、中から書類や写真を取り出した。いったいどんな物を見せられるのか。兼続の言い方から察するに、少なくても見て楽しい物ではなさそうだ。