【桜彩side】



忙しくバタバタと家中を駆け回る朝。


普段なら忙しさと遅刻の焦りで、物事を考える暇なんてこれっぽっちもない。


なのに………


「…っ……な、なんで思い出すのよっ……!」


頭をポンポンと叩いたところで、忘れてくれるはずもなく……。


ファーストキスの映像が鮮明によみがえる。


手首を引っ張られて……バッチリ凛くんと目が合って……


唇を押し付けられ……


あたしのファーストキスを簡単に奪ってた。


腹立つのに、なぜか切なくて胸がキューっと締め付けられる気分。


何考えてんのあたし……。


早く学校行かなきゃ遅刻しちゃうのに……



あたしらしくないや……。


「学校……行こ…」


半袖の白いセーラー服に赤のリボンをしっかり付けて、駆け足でマンションを出た。