夜も更けた王宮の端で、小さな火の手があがった。


何者かが王宮に忍び込んだらしく、賊をとらえよと王宮中の兵士が慌ただしく城の中を駆け回っている。



そんな騒ぎの中、ティアナはカイルの肩の上に乗って城の中を移動していた。


王宮の中に捕らわれているパフィを助けるためには、王宮に詳しいカイルが頼りだ。アベルとディオンが兵士を引き付け、その間にティアナとカイルが一緒に動くことになった。

兵士たちの騒ぎようからして、アベルたちはうまく仕事をしているようだ。


「きっとパフィは魔導士の部屋の近くにいるね。万が一でも父上の手に渡るのは嫌だろうから」


そう言ってすいすい足を進めていくカイル。


彼は一応、王宮を追放された王子であるため誰かに姿を見られてはまずいのに、つけ髭の変装だけで堂々と廊下を歩く。

すれ違う人々は、彼をとらえようとするどころか、頭を下げて道をあけている。


彼は時々兵士に早く賊を捕まえろと声をかけながら歩きさえし、茫然としているティアナに目配せをした。