キヨが目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋だった。


イノリの腕の中で目を覚ますかと思っていたキヨは残念に思った。




「…もう夕方か。わざわざ部屋に運んでくれなくてよかったのに。イノリのバカ」




喉の渇きを感じたキヨはスウェットを着ると、目を擦りながらキッチンへ向かった。


家の中は物音ひとつしない程静かだった。





「休日なのに静かだな。みんなバイトかな?」



キヨは水を飲むと、イノリの部屋に足を運んだ。





「…昨日の今日で何だか恥ずかしいなぁ。どんな顔すればいいんだろ」



キヨは顔を赤くしながらノックをする。

しかし返事はない。





「あれ?イノリは今日バイトないはずだよね。まだ寝てるのかな」



キヨはイノリの部屋のドアノブを握るとドアを開いた。




「………え?」




キヨの目に映ったのは、物がなくなった部屋。


イノリの部屋は何もない空き部屋になっていたのだった。






「なんで…?だって昨日まで…」



キヨが呆然と立ち尽くしているとカンナが帰ってきた。





「おはよう、キヨ。やっと起きたのね」

「カンナ!イノリは!?イノリの部屋が空っぽなの!!なんで!?」




キヨがカンナに駆け寄りカンナの腕を掴むと、カンナは悲しそうな表情を浮かべた。