キヨはその日の夜、イノリの部屋を訪れた。



「イノリ、入るよ」



キヨはノックをしてから部屋の中へ入る。


イノリは腕で顔を覆いながらベッドに寝そべっていた。




「イノリ?寝てるの?」

「…起きてるよ。何?」




イノリは面倒くさそうに体を起こすと、頭を掻いた。




「…単刀直入に聞くけどイノリ、お姉ちゃんと付き合ってたの?」

「何だよ、ケンに聞いたのか?」

「カンナに聞いた。カンナ、お姉ちゃんと仲良かったからお姉ちゃんに聞いたんだって」



イノリはふーんと相槌を打つと煙草を手に取り、くわえる。




「付き合ってねぇよ。華月の相談相手になってただけ」

「でもヤッたんでしょ!?」



キヨがイノリを睨むと、イノリは煙を吐き出しながらキヨを見る。




「俺が誰と何しようが俺の勝手だろ。お前には関係ない」

「関係あるよ!イノリは勝手過ぎる。自分だけ好き放題言ったりしたりして…。私がどれだけ辛い想いしてるかわかってるの!?」



キヨは声を張り上げて怒鳴る。




いつもいつもイノリは

『お前とは結婚しねぇ』

とか

『お前には関係ない』


と、私を突き放す。





受け入れるつもりがないのなら

そうやって距離を作るのなら


『好きだ』なんて言わないで欲しかったよ…。




でも…

私がイノリを好きなのは紛れもない真実だ。