夏木エルさんのレビュー一覧
読み終わり、雨上がりのカエルになったような気分です。 雲の去った青空を見上げると、悲しいのに、なんだか悪くないような。 大満足のドラマチックな短編でした!
幾度の恋文のやりとりで、ゼロから育っていった艶子の恋心。 恋愛初心者らしいテンパりや浮き足立つ様子に、過去の恋を思い出します。 登場人物たちそれぞれの人となりや、心情の描写が丁寧で、読みながら彼らが頭の中でいきいきと動いていました。 後半、アキに向かって綴った気持ちを投げつけ、飛ばすあのシーン。 切なく、激しく、映画のワンシーンのようでお気に入りです。 顔をくしゃくしゃにして叫ぶ艶子が、鮮やかに浮かび、読み終わったいまも焼き付いています。
読んでいて胸が痛くなるのに、同時に心が澄んでいくような。 そんな物語でした。 サクもレイも圭都も、みんなひたむきで愛おしくて、だからたまらなく切なくなってくる。 作者の晴虹さんがあとがきで、全力疾走で完結とおっしゃられていましたが、物語の中の彼らも全力で駆け抜けていました。 読み終わったいまも、空をゆびさす彼らの姿が脳裏に浮かんだまま消えません。 空をゆびさして。 サクの指の先にはいつだって、レイの笑顔があるんだろうな。
EVERYDAY MUSIC 略してエブミュのアキが、リョウと出会う前。 彼女が深く激しく傷ついていた過去のお話。 アキの抱えている、けっして幸せばかりではなかった過去と、 傷つきながらも懸命に歩いていた彼女の生き様を目にした時、 エブミュの世界の色がより鮮やかにきらめきます。 エブミュはきっと、この作品を読んだ時にはじめて完成するのだと、 そんな風に感じました。 2つ合わせてオススメです!
バンドも恋も全力で。 犯罪級に天然タラシのイケメンリョウ。 そのリョウを振り回すほどの天然小悪魔アキ。 この2人が不器用ながらじょじょに距離をちぢめていく過程に、 むずむずして叫びだしたくなります。 多くは語らずただオススメしたい理由は、 ここで語ってしまうのはもったいないから。 ただの青春小説でも、ただの恋愛小説でもなく、 実はとてもとても、広く深く世界が広がっている素敵な作品です。 アキが主役の『NO HEROES』と合わせて読んでみてください。 年齢制限なしで、素敵な世界にあなたも飛んでいけます。 本当にオススメですよ!
この物語には音が溢れています。 タバコが燃える音、 微かに揺れ瞬く音、 笑顔のこぼれる音、 涙が頬をつたう音、 悪夢に泣き叫ぶ音、 現実を嘆き憂う音、 彼女を愛し抱く音、 自分を許し歩む音、 優しきエゴイストが紡ぐ音と物語を、ぜひ味わってみてください。 気だるげな世界に身を投じれば、 あなたもきっと、数多の音の虜になります。