和宮 樹さんのレビュー一覧

★★★★★
2013/04/24 11:20
平凡で非平凡な最幸の日

幸せであることをひとつの形にして、感謝と誓いを親しき人々に届ける日。 それはその日限定の想いではないから、とんでもない非日常であっても、ごくごく普段からある、とても平凡なもの。 アットホームというよりも、“ホットホーム”と称する方がしっくりくる、素敵な姐さん女房の燦々と輝く日々の序章です。 ご結婚、おめでとうございます。 おふたりが“走り抜ける”人生に、極上の幸がありますように。

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★★★★★
2013/04/23 11:56
感受性の育て方

例えば桜の絵を描くとする。 花びらを何色で塗るだろう。 ピンク? 青? 橙色? はたまた、黒? では、どれが“正解”だろうか。 結論をいえば、それが“悪ふざけ”で選んだのでないかぎり、どれも正しい色なのだ。 この話は、それにつきる。 感受性にたったひとつの答えはないのだ。 それを、どう汲み取るか。 これは、そのことを見つめ直すにちょうど良いお話です。

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★★★★★
2013/04/14 03:45
実にいぶかしい作品

じとり、と纏わりつくような文章に息苦しさを覚えつつも、貪るようにして行間に爪を立て、食い入り読み込むのは“ぼく”の感情をどのように受け止めればよいのかがわからないため。 激しい焦燥感と、後ろめたさを醸す後悔。 そして、誰ともなく告げる自虐。 あえていう。 これは―― ――『純愛』だ。

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★★★★★
2013/04/05 12:30
不器用な想いをチョコでくるんで

ひた隠ししている想いをチョコの甘さに託して、熱い気持ちはウィスキーに見立てて。 ほろ酔うその頬がまるで自分への恋の火照りならいいのにと、心のどこかで思いながら。 そんないじらしい男の子の姿に、ちょっと酔いしれてみませんか?

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★★★★★
2013/03/29 11:16

人は生きることに意味を求める生き物であり、そんなものを求めるのはまた、人だけである。 風がやさしいであるとか。 花が美しいであるとか。 笑顔があたたかいであるとか。 それはきっと、誰かと胸の内を共有したいからなのだろう。 そしてそれは、声に出さなければ誰にも届かない。 何もいわずとも伝わることがあるのは、それまで相手に伝え続けたものが降り積もって、ようやく叶うものなのだ。 そんな当たり前だけれども、忘れがちで、しかし大切なことを今一度気付かせてくれる物語です。

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★★★★★
2013/03/26 13:33
夢現

それは泡沫の夢の如く。 もしかするとこれは現実ではなく、主人公が渇望のすえに見た幻想に過ぎなかったのかも…… そんなことを読了のときに感じました。 人は誰かに認めてもらいたいもの。 痛ましいまでの想いに溢れた本作は“小説”という枠だけでなく、人であればどこかで抱き続けているもののように感じます。 何を成すことが“自分”であるのか。 それを見つめ直すことの出来る物語です。

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★★★★★
2013/03/26 00:59
現実的非現実

例えば、今すれ違った人が“人”である保証はどこにもない。 非現実はいつだってそこにあるのかもしれない。 いやそもそも──“何が現実”なのか? それすら、本当は誰も知りはしないのだ。 途中の盛り上がりが、逆に読者の油断を誘う非常に味わい深い作品です。

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★★★★★
2012/06/07 02:21
美しい指には夜がよく似合う

JAZZYなやりとりの中で穏やかに流れるクラシカルな音楽は、とても心地よく。 何よりも、作中の2曲は美しい指に実に合う。 作者、わかってるなぁ。 物語の始まりのような、終わりのような不思議な雰囲気の中、読者はふと、この“曲”の続きを欲しがってしまうことでしょう。 追記 感想ノートの作者コメントに、爆笑せざるをえなかったwww

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★★★★★
2010/05/14 12:47
ブローイング

絵画の技法に『ブローイング』というものがある。 カンバスの上に絵の具をたらし、それに息を吹きかけて描くという技法。 この作品はそれを思わせる。 様々な原色がカンバスにぶちまけられ、時には叫び、時には笑い、時にはささやき、時には嗚咽をもらす。 そこから生まれる“息”が描き出す大胆で、けれど繊細なひとつの物語。 ぶつかり合いながら、混ざり合いながら、必死に何かを作り上げようとする彼らの姿に読者はきっと熱い想いを胸に抱くことでしょう。 そして、こぼれる吐息。 さぁ、アナタもこの素敵な世界に加わってみませんか?

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★★★★★
2010/04/22 14:05
五線譜越しの記憶

やわらかな音をふうわりと耳にするような語り口で進む、少し切ない物語。 口にする以上に分かり合えていたのはきっと五線譜の上に彼女たちのすべてが表れていたから。 そして一風変わった物語の描き方が絶妙で、楽譜1枚隔てた視点で描かれていたからこそ、この感動があるのでしょう。 これが単純な1人称であったならばこれほどのカタルシスは生まれなかったに違いありません。 まさにda capoしたくなる作品。 ぜひ皆様ご一読、いやご一聴下さいませ。

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★★★★★
2010/04/05 15:24
出逢うことは

出逢いとはつまり別れの始まり。 だからそれまでの時間を大切にして欲しいという作者の願いが詰まった作品です。 人は、わかっているはずなのにいつの間にかいつまでも今が続くと思い込んでしまう生き物。 けれども時間は成す術もなく、無情に流れています。 それをただ痛々しいだけのものにするか。 それともやさしさをはらませることが出来るか。 それはひとえにあなた次第。 不思議な世界を通して教えてくれるとても当たり前で、けれどとても大切なこと。 あなたは今を、どのように過ごしていますか? 表現の随所に作者の個性が見受けられ、まさに『冬馬 雪』をギュッと詰め込んだ作品。 ぜひご賞味あれ。

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★★★★★
2010/01/25 10:36
世界は君で溢れてる

出逢いは点で、そこから1歩踏み出すことでそれは線となり、人は人とつながることが出来る。 そんな勇気を優しい音色と共に教えてくれるのが本作。 短さを感じさせない物語の深さ、感動が心に染み込む速度。 それらがとても程好く、私たちにあたたかな時間を提供してくれます。 そして何より携帯小説の作家にも、読者にも夢のあるお話。 ぜひ1度ご賞味を。 そのとき、あなたの心にはどんな音が響くでしょうか──

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★★★★★
2009/12/18 00:44
その1歩こそが、奇跡

突然訪れる運命的な偶然は、ただ触れるだけでは舞い落ちた雪と同じで、瞬きする間に消えていく。 それを運命“的”ではなく“運命”とするには踏み出さなければそれは成りえない。 1歩を踏み出したその瞬間に、それは奇跡という輝きを放ちながら私たちの行き先を照らしてくれるのです。 それを本作は主人公の雪を通して私たちに教えてくれます。 クリスマスを前にして、まだ勇気を出せずにベッドの上のプレゼントを眺めているアナタ。 これを読んで見てください。 きっと、勇気のきっかけになる灯りがアナタのこころに燈されるはずですよ。 さぁ……踏み出しましょう。

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★★★★★
2009/10/23 03:16
駆け抜けよう、この素晴らしき空の下を

かけがえのないものはいつだって手を伸ばせば届く所にある。 けれど、手を伸ばさなければ決して届くことはない。 そんな当たり前のことを私達はついつい忘れてしまいがち。 主人公のふたりが織り成す爽快な友情物語は、その奥にそんな大切なメッセージを痛快なテンポと愉快なリズムの裏に隠し持っています。 カッコ悪くてもいい。 スマートな生き方じゃなくてもいい。 でも風は2度同じものは吹かないのです。 だからその瞬間の風に乗り遅れないよう、不器用でも飛び込んでみましょう。 この作品を読めばきっと、その1歩を踏み出す勇気をもらえるはず。 さぁ、あなたも──フリーダムライドを!

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★★★★
2009/07/08 11:49
ネタバレ
カチリ、と音がする

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★★★★★
2008/12/13 11:51
冷めゆく程に熱く

『結婚』とは、夫婦になったときが頂で、後は下っていくだけなのだろうか? カフェオレは淹れたてが最も美味しく、後は不味くなっていくだけなのだろうか? きっと多くの人が一度は抱えてしまう悩み。 本作はその答えを導き出す“きっかけ”を与えてくれます。 けっして明確な答えではなく、足を踏み出してみようというきっかけ。 愛に悩んだとき、読んでみられることをオススメ致します。

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★★★★★
2008/11/13 13:59
ありがとう

読み終わって、気付けば静かに頬を濡らし ぽつり と、この言葉が口をつきます。 一見淡々としているようでいて、その実とても良く言葉が選ばれた本作。 人の幸せの原点とは……。 それを教えてくれる大変貴重な、そしてとても愛おしい作品でした。 こころから作者に『ありがとう』の言葉を贈らせていただきます。

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★★★★
2008/10/14 10:51
静と動

静かに流れる場面とは裏腹に、その奥にある感情はときに荒れ狂い、ときにゆっくりと腐蝕し、またやさしくあたたかみを帯びていく。 なんとも不思議な感覚に支配されていきつつも確かな余韻を読者にもたらしてくれる作品でした。 後半の姉との下りをもう少し膨らませてもいいかな、とも思いましたが、それを差し引いても大変個性的で雰囲気のある素敵な作品でした。 この作品にはどんな曲も当てはまらず、ただしとりと降る雨音こそが相応しい……。

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★★★★★
2008/07/11 02:25
まあるい気持ち

ライオンが人を好きになる。 あまりにも突飛な物語。 なのに驚くほどやさしい気持ちにさせてくれる本作品。 きっと手にとったあなたはいろんなことをこの物語に重ね合わせることでしょう。 とても象徴的な内容で、だからこそこのお話は人のこころに素直に溶け込んで、あなたのこころをまあるくまあるくしてくれるはずです。 ぜひ、ページをめくってみて下さい。

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★★★★
2008/05/27 11:45
背中にあるもの

終始自らに、そして誰かに問いかけるようにして綴られる本作。 あたかも一冊のクロッキーに色もなく、ただありのまま、思うがままに描かれていくかのよう。 そしてこれはきっと誰しもが我知らず背中に負っている想い。 言葉そのもので何かしら自分に変化を与えてくれる作品ではないけれど、作者のこころと共鳴することで、どこか「自分だけではない」という“安堵感”を与えてくれる作品になっているように感じました。

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