ようこそゲストさん
「田代くん、おまたせ!」
「ん、おう」
私たちは付き合ってるわけではない。でも、偶然図書室で会ってからなぜか毎日こうして待ち合わせて一緒に帰っている。
他にも何人か人はいるけど、私たちはちょうど本棚の陰になるところのイスによく座ってるからあまり気にならない。
「じゃ、帰ろっか」
「あー…待って」
「え?」
図書室を出ようとした私の手を、田代くんが遠慮がちにつかんで引き留める。
少し骨ばった大きな手に、ちょっとだけドキンとした。
「なぁ、俺、ちょっとは意識してもらえてたりする?」
「へっ…」
「…気になってもないやつと、毎日一緒に帰るなんてないだろ」
そう言われ固まっていると、繋いでいた手がほどかれ、頭を撫でられる。
「まずはこれだけ。これから俺のこと、好きになって」
顔を真っ赤に染めて、それでも私の目を見つめながら彼はそう言った。
…心臓の音が、うるさい。