ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. ちくしょう、これ絶対、熱ある。

    昼休み、午後は帰るって担任に言って、向かった先は軽音部室。

    放課後まで寝る。

    帰れるかっての。


    ――肩に、何かが触れてる。

    声が聞こえる。


    「……ねえ、お、起きて?」


    目を開けてみた。

    くそ、まだ頭痛ぇ。

    泣きそうな顔した先輩が、おれを見下ろしてる。


    「今、放課後っすか?」


    「う、うん。具合、悪い?」


    「って、先輩、いきなり泣くなよ」


    あんたの顔見たくて、軽音部室で転がってた。

    泣かせるつもりはなかったんだけど。


    「もう少し、寝る? ひ、ひざ、枕にして、いいよ?」


    「は? ひざ枕って、次に起きた瞬間、おれ、あんたのこと襲うぞ」


    「いい、よ」


    さすがロックやってるだけある。

    小動物っぽく見えて、意外と度胸がいい。


    「覚悟してろよ、先輩」


    なんてね。

    今、弱ってっから。

    甘えさせてよ、先輩。

    きゅん

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  3. サボり魔が多い軽音部で、ドラムのおれとベースの先輩だけは毎日練習する。

    けど、今日は演奏になりそうにない。

    先輩はちっちゃい体にベースを抱きしめて、ぐずぐず泣いてる。


    「あのバンドのヴォーカルが結婚したこと、そんなにショックなんすか。

    いい年してんだから、恋愛も結婚もしますって」


    「ち、父の影響で、わた、わたしも、昔からずっと聴いてて……」


    先輩の提案で、おれたちのライヴでもカバーしてる。

    シンプルな曲構成のディスコロックは、おれも好きだ。

    でもさ、先輩。


    「失恋して世界が終わりそうみたいな顔、やめてくださいよ」


    おれは先輩のベースを取り上げて、スタンドに立てた。

    くそ、涙の拭き方とか、わかんねえ。

    あの甘くてしなやかな歌声に奪われてる先輩の心、おれが奪い返したい。


    「おれの前で、ほかの男のために泣くなっての。

    てか、好きな女に泣かれたくねぇんだよ」

    きゅん

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  4. 軽音部室のドアを開けた先輩は、おれと目が合って、悲鳴をあげた。

    部室で着替えてたおれは、上半身、裸で。


    「見られた側じゃなく、見た側が悲鳴っすか?」


    先輩は、ちっこい体にベースを背負ってて。

    慌てて逃げ出そうとして、ドアにベースが引っかかった。


    「楽器、傷むでしょーが」


    着替えよりベースの安全を優先する。

    右手でドアを支えつつ、ベースもろとも先輩を後ろから、左腕で捕獲。


    「ドラムやってっと、汗すごくて。

    いい体でしょ?

    夏場のライヴ、脱ぎ要員になりますよ」


    冗談だけど。

    上マッパのおれとじゃ、先輩、演奏できねぇだろうし。


    「ぬ、脱ぐのダメ……ひ、人に見せるの、もったいないっ」


    「は?」


    「わたしだけ見せてもらって、ご、ごちそうさまでした」


    後ろからつかまえたまま見下ろしたら、先輩の耳、真っ赤。

    何これ、かわいい。

    やべ、離れられねえ。

    きゅん

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  5. 「エイプリルフールってことで、盛大に嘘をつこう!」


    軽音部で紅一点の先輩が、去年に引き続き、すごい張り切ってる。

    去年、おれは見事にだまされた。

    敬愛するバンドAとBがまさかのコラボCDを発売する、って。


    「あたし、今、彼氏と超ラブラブなの」


    知ってる。

    だいぶ長かった彼氏と、最近別れたって。

    泣きそうな目して笑ってなくていいのに。


    「先輩、去年より嘘の質が落ちてます」


    「なら、きみがお手本を示してよ」


    「先輩のブス」


    「……嘘じゃないじゃん」


    「嘘ですよ」


    「嘘じゃないもん。

    元カレからずっと言われてたし。

    で、元カレの今カノ、めちゃくちゃかわいい」


    「そんなやつ忘れていいです。

    おれ、嘘でも、ブスとか言いたくなかったですよ」


    「それ、全部、嘘?」


    「ブスって言ったのだけ嘘です。

    おれの好きな人は、いつでもかわいいですから」

    きゅん

    37

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  6. 演奏の、最後の1音。

    その心地よい余韻の中で、きみはおれを見つめる。


    「ラヴソングは、キミのこと想いながら歌うの。

    あたしの気持ち全部届けー、って」


    照れ笑いして、赤い頬。

    キラキラ輝く瞳。


    「まったく、きみは何度おれを惚れさせたら気が済むんだ?」


    「そ、そんなの……キミのほうこそ、いつもカッコよくて……」


    「ダメだ」


    「はい?」


    戸惑うきみを、問答無用で抱き寄せる。

    腕の中に閉じ込めて、赤くなっているきみの耳に唇を寄せる。


    「きみのそんな顔を、バンドの連中に見せたくない。

    おれが独占していたい」


    「だ、大丈夫だよ、変な心配しなくてもっ。

    あたしが好きなのはキミだけだもん!」


    わかってる。

    でも、どうしようもないんだ、この独占欲は。


    「好きだ」


    言葉を重ねても足りないから。

    唇を重ねる。

    本当はもっともっと、きみがほしい。

    きゅん

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  7. ギターに夢中なきみは、ぼくをちっとも意識してくれない。

    でも、振り向かせたい。


    「練習お疲れさまです」


    「う、うん……お疲れさま」


    ほら、きみはぼくから目をそらして、うつむく。

    ぼくは、あの手この手で近付く。


    「甘いもの、ほしくありません?

    チョコレートでもどうですか?」


    「あ、えっと……ありがと。

    もらおう、かな」


    「はい、どうぞ。

    練習を頑張ってくれたごほうびです。

    口を開けてください」


    「ええっ!?」


    戸惑いながら真っ赤になるきみが、かわいくて。


    ドキドキしてるんですよ、ぼくも。

    余裕のあるふりをしてみせてますけど。


    「はい、あーんしてください」


    きみは、ほんの少し口を開ける。

    小粒のチョコレートをつまんだぼくの指先が、かすかに震えて。

    きみの柔らかい唇に、そっと触れてしまった。

    きゅん

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