ケータイ小説 野いちご > 野いちご学園

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  2. 今日はイースター。

     私はチョコレートの卵を精也君に渡す予定だ。

    「結衣、おはよう。精也君に卵作って来たの?」

    「うん。でも渡せるかなって」

    「大丈夫だよ。目の前にいる精也君、一人だもん」

    「ほんとだ。ちょっと行ってくる」

     私は精也のもとに小走りで行く。

    「精也。この卵受け取ってくれるかな?」

    「いいよ。これ何でできてるの? 食べ物?」

    「チョコで出来てるよ」

    「今食べて言い?」

    「うん」

     精也は私が渡したチョコを食べだした。

    「おいしいね。……何か入ってる」

    「私、戻るね」

    「待って、この紙に書いている事、本当?」

     私は卵の中に好きと書いた紙を入れていたのだ。

    「ほ、本当」

    「俺も好きなんだ。俺と付き合ってくれない?」

    「はい!」

    きゅん

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  3. 「今日はイースターだね!」

    「イースターだからって特別な事にだろ?」

     私は精也と話している。

     彼と今、おうちデートをしている。

    「特別な事がなくても、いいじゃん」

    「結衣がいいなら、俺は構わないけど」

    「でしょ。でも何かしたい」

    「いうと思った。何かしたいならウサギの格好でもしたら? うさ耳つけるとか?」

    「それいいね! 精也がそう言うと思って、実は買ってきてたんだ。はい」

     私は持っているうさ耳を瀬谷に渡した。

    「なんで俺が付けるんだよ。つけるならお前の方が似合うだろ?」

    「私は似合わないよ。精也の方が可愛いし、絶対に会うって」

    「いやだ。お前の方が似合うし、まず俺は男だ」

    「男とか関係ないよ。似合う方が付けるのがいいと思う。一つしかないし」

    「じゃ、精也が付けたらつける」

    「分かったよ」

     精也は諦めて付けた。

     そのあと私が付ける事は無かった。

    きゅん

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  4. 今日はイースター当日だ。

    「結衣、その格好に会う」

     私は教室でメイド服にうさ耳をつけている。

    「いいじゃん。今日はイースターなんだし」

    「そうだけど、私だけなんて恥ずかしいじゃん。咲來ちゃんも来ようよ」

    「私は遠慮しておく。その代わり、あんたが好きな精也君もウサギ姿だよ!」

    「えっ。嬉しいけど精也君にこの姿は見られたくない」

     そう言い合っていると精也が教室に入ってきた。

    「何の話しているの?」

    「今、結衣のウサギメイド服が可愛いねって話をしてたの。精也君はどう思う?」

    「いいんじゃない? すごい結衣ちゃんに似合っていると思うよ」

    「ありがとう。精也君のウサギ執事もにあってる」

    「結衣、顔真っ赤」

     友達に茶化されていると精也が話始める。

    「今日のイベント、一緒に回らない?」

    「はい!」

    きゅん

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  5. 私は生徒会室でイースターの卵を準備していた。

     そこに同じクラスの精也が入ってきた。

    「お前それ、一人でやるのか?」

    「そうだけど? 何か問題あった?」

    「他の役員に手伝わせないのかなって思っただけ」

    「本当は他の人もいたんだけど、皆用事があるみたいで帰っちゃった」

    「それ、押し付けられているだけなんじゃない?」

     彼は私の前に座ってきた。

    「あなたはここで何をしているのですか?」

    「君の事を探していたんだよ。何か俺にも何か手伝わせて」

    「物好きですね。じゃ、この卵の柄をお願いします」

    「何でもいいの?」

    「はい」

     二人は世間話や自分の話、主に彼の話だったが下校時間まで卵の柄を描きながら話した。

    「手伝ってくれて、ありがとう」

    「いいえ。明日もやるの」

    「はい。終わらなかったので」

    「じゃ、手伝うよ」

    「ありがとう」

    きゅん

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  6. 「お前、何やってんの?」
    「ええと。卵料理の後片付け」
    「他の女子は帰ったのに?またお前だけかよ」

    やれやれと幼なじみは手伝いをしてくれた。

    「ごめん」
    「別にいいけどさ。で?肝心の料理はどうしたんだよ」
    「そ、それが」

    上手にできた作品。それは他の女子が勝手に持っていって行ったと私は説明した。

    「自分のは失敗したからって無理やり」
    「じゃ、お前のは無いのか」

    どこか残念そうな彼と私は帰っていた。

    「あのさ。お前って作ったの」
    「ええと茶碗蒸しだよ」
    「は?」

    卵料理ならなんでも良い話し。私の話を彼は笑った。

    「涙出る?あのさ。イースターの料理だろう?いいのそれで」
    「だって。これは勉強だから。本当に好きな人には別に用意してあるもん」
    「おっと…」

    彼は振り返った。

    「どこに」
    「家に」
    「マジで」
    「来る?」
    「もちろん!」

    肩をぶつける彼からは夏の香りがした。

    きゅん

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  7. イースターは卵料理を食べるらしい。
    たったそれだけの情報で私の最近のお弁当は卵を使ったおかずが何かしら入っている。
    今日はそぼろ丼。
    スプーンでこぼさないように食べていると、いつものように後輩がやってきた。

    「先輩、こんにちはっ。今日もこんなところで食べているんですか?」
    「レジャーシートさえ持っていけばお花見の穴場なのよ」
    「あー、確かに、桜、きれいですねぇ」
    今気づいたの?
    こんな素晴らしい桜に興味無いし、私のところに遊びに来るし、可愛いけど何考えているかよくわからない。

    「先輩、卵ついていますよ」
    後輩は言いながら私の唇に触れ、それを自分の口に入れた。
    恥ずかしさが勝ってなぜそんなことをするのか聞けなかった。

    「いや俺だって男ですし。一目ぼれした先輩にお近づきになりたいって思うじゃないですか」
    そしていつかは食べさせてくださいね、可愛いうさぎ先輩、と笑顔を向けられても。

    きゅん

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  8. 今日もゲットできなかったよぉ…


    お昼休みを告げるチャイムと同時

    先生よりも早く教室を飛び出し
    売店に走ったのに

    限定ウサギちゃんンパンのポップには
    完売の札がペタリ。

    イースター限定だったのに…
    次に狙えるのは、また来年だよぉ…


    「今日もダメだったの?」

    優しい声に誘われるように見上げると
    隣の席の七海君が。

    「30個なんて、少なすぎ~」

    「バレンタインも、クリスマスも
     限定パンをゲットしそこなってるでしょ?」

    七海君に、そこまでバレてたんだ。

    「俺のお願いを聞いてくれたら
     このパン、あげてもいいけど」

    「お願いって?」

    「明日、古典の教科書を忘れてくれる?」

    えっ?

    「忘れたから隣の人に見せてもらうって
     先生に言うんだよ」

    なんで七海君の顔、そんなに赤いの?

    「授業中
     こっそり手を繋ぎたいんだけど……いい?」

    良くない…
    こっそり、ムリだよ…

    きゅん

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  9. 「見〜つけた!」

    私は生徒会に入ってて、リハでイースターの練習って事になって。

    私が何故か、うさぎのコスプレを。

    「恥ずかしいです」

    私には、こんなの似合わない

    「も〜、可愛い」

    お世辞でも可愛いは辞めてください

    「そんな事ないです!冗談は辞めてください」

    私、期待しちゃうから

    「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」

    真剣な表情で私の目を離さない

    ーピシュー

    「あらら、本当のこと言っただけなのに」

    もう、胸が跳ね上がりすぎて、しんじゃいますよ〜

    体温が暑くて。

    「今日のところはこれで我慢してあげる」

    私達は恋人でも無いのに、沢山のキスがふってきて。

    マシュマロみたいにトロトロに溶けていきそうです!

    きゅん

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  10. 「ま〜た、無理して結衣」

    「そんな事ないよ…」

    ちょっと、眠たいくらいだし

    それに、仕事だから

    「ほら、顔が疲れてるって。言ってるぞ」

    図星で思わず「え?」と、声が出る

    「嘘」

    「今日、エイプリルフール」

    「ああ…」

    すっかり忘れてた。


    「今日、デートしない?」

    涼太が私のこと好きなわけないし

    「嘘でしょ?も〜、辞めてよ〜」

    こんな冗談は辛すぎる

    「う…………」

    間が長すぎて、緊張が高まってくる

    「嘘じゃない。俺、結衣のこと好き」

    え?そんな事あるわけ…

    「今日は、俺に構ってよ」

    私の返事も聞かず、涼太は私の太ももの上で眠りに入っていった。

    私は、作業所ではなく、ドキドキして。

    もう、ミスが絶えないよ〜

    「結衣、大好き」

    寝言のように口を開き、私にギュッとくっついてくる。

    もう、私の心臓が破裂しちゃいそうです!

    きゅん

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  11. 私と中原はご近所同士。帰り道も一緒になるわけで…。
    「そういや、もうすぐイースターだな」
    帰り道、中原が突然呟いた。
    「イースター…?」
    「そう、知らない?」
    中原にバカにされてるみたいでムカつくので、知ってる振りをする。
    「知ってるし!卵隠すやつでしょ!」
    「…正確にはキリストの復活祭だけどな」
    「私も卵探すやつやってみたいなぁ~」
    ”人の話聞いてる?”と隣で尋ねる中原は無視し、話を進める。
    「てか、お前方向音痴だから卵探すの無理だろ」
    「方向音痴関係ないでしょ!」
    「俺が面倒なんだよ…居なくなったお前探すの」
    出たよ、中原のウザいお節介。
    「私は子どもじゃない!!」
    「でもまぁいっか、居なくなっても」
    「え……?」
    すると、突然背後から中原が私の身体ごと抱き寄せた。

    「こうして俺がお前をすぐ捕まえるから」

    中原が耳元で囁いた。

    このバカ、二度とイースターなんかしないって決めた。

    きゅん

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  12. 「イースターって卵の祭りだよね。」


    たまに女子たちがはしゃいでる、毎年やって来るイベント。イースターなんて言葉、つい最近知った。やっぱり私は隠キャだからキラキラしたイベントとは縁が薄いのかな。


    「玉井、今日用事あるの?」

    「うん。」

    本当は家に帰っても寂しく夜ご飯を食べるだけ。家は母子家庭だから、お母さん夜遅くまで働いてて誰もいないんだ。でも、そんなことクラスの人気者である、白木君には言えない。本音を言える相手がいたらいいのに。私の気持ちと重なって、白木君が小さくため息をつく。



    「玉井はイースターなんて興味ない?」


    「……っ、そんなこと……。」

    言えない。私も一緒に季節のイベントを楽しみたい。でも、私には……。


    「あの、さ。」

    「俺の隠した玉子、見つけるまで返してあげない。」

    「決めたから。今日だけ特別、な。」


    きっと白木君は私の気持ちを知っている。

    きゅん

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  13. この一週間

    鈴君が、手作りお菓子をくれるけど


    「今日は、エッグタルトとプリンと
     ウサギのクッキーと、ウサギケーキと…」

    日に日に、お菓子の種類が増え


    「美羽先輩
     今日はイースターパーティーしましょ」

    広げたレジャーシートの上に
    鈴君が大量のお菓子をドドーン。


    嬉しいよ。私のために
    毎日お菓子を作ってくれるし

    おいしいって言うだけで
    ピョンピョン喜んでくれるし

    嬉しい…けど…


    胃がお菓子を拒絶

    見るだけで
    ニガニガ胃液が込み上げてくるから。


    「鈴君ごめん。
     お菓子は食べられそうにない…」

    「もしかして僕…
     無理やり食べさせてましたか?」

    「そんなこと…」

    「僕の愛って…重すぎですよね?
     彼氏…失格ですか…?」


    捨てられる子犬みたいなウル目で
    見つめないでよぉ。


    学校の中庭なのに

    『鈴君、可愛いすぎ!』って
    抱きしめたくなっちゃうから。

    きゅん

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  14. 「どうした」
    「イースターの本を探してって友達に頼まれて」
    「…そんな本あるのか」
    「え?島ですよね。友達はそう言って」
    「外を見ろ」

    そこには友達が笑いながら男子と帰っていた。

    「待ってるはずなのに」
    「あの男と帰るためじゃないのか。お前が邪魔だったんだろう」
    「…そんな」

    必死に本を探していた私が馬鹿みたい。ガッカリしていた時、先輩が私の頭をポンとした。

    「お前、あいつが好きだったのか」
    「全然です。付き纏われて困っていたし」
    「ならよかったじゃないか、それよりも」


    先輩はもう帰ろうと言った。

    「だって今日はイースターだぞ」
    「イースターって何ですか?」
    「そうだな…」

    先輩は好きな人と帰る日と言った。

    「でも、良いんですか?私で」
    「嫌いな奴に頼むか?普通」
    「だ、だって」
    「返事は?」
    「お願いします」

    先輩の手。それを掴んだ私は一緒に図書室を後にした。

    きゅん

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  15. 生徒会室の会議が終わり、生徒会室で生徒会長と書記の私、2人だけになった。
    「生野」
    「はい」
    私は書いていた手を止め、顔を上げ、生徒会長を見る。
    「選ばれなくて残念だったな…」
    今日の生徒会の会議で、新しい学校行事を何にするか決めたのだが、私が提案したイースターは選ばれなかったのだ。
    「俺も残念だったよ。
    やってみたかったからな!」
    「票を入れたの?」
    「入れた!
    面白そうなのになぁ……」
    そんなにやりたいなら…。
    「イースターやる?」
    「やる!!」
    「じゃあ…」
    まず副会長を誘って…。
    「楽しみだなぁ…。
    生野と2人だけのイースター!」

    きゅん

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  16. 「先輩なぜ俺たちは放課後残ってまで発泡スチロールを丸型に削ってるんですか」
    「それはね後輩、明後日がイースターだからだよ。具体的に言えばこの丸型の発泡スチロールが卵に見立てられて全校生徒に配られ、それを皆が絵の具で塗っていき」「エッグハントが始まると」
    「そうだよ後輩」
    「なら何故俺たち美術部がその作業をやっているのでしょうか」
    「それはね私達美術部が先生方からは暇に見えているからだよ」
    「実際暇ですしね」「そうだね」
    「…いやおかしいだろ!」「ですよね」
    「普通、実質2人だけの美術部に頼むかな」「普通はないですね」
    「あーもうなんかこの作業飽きてきたしどれか塗ろうかな」「何塗ります」
    「絵の具でハート型に塗るか」
    「それでハート書いた卵を真ん中で割ってみるか」「鬱憤晴らしにいいですね」「あっでも1個残してて下さい」「なんでかね後輩」「明日先輩にあげるんで」「へっ」
    「俺先輩好きなんで」

    きゅん

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  17. なんで、同じクラスになっちゃうかなぁ。

    『礼君と違うクラスに』って
    神社で手を合わせ、千円札を投げ込んだのに

    新学期の教室には
    数日前に私をふった、元カレの姿が…


    ――神様、千円返して


    私の名前が書かれた席に着くと

    机の中に、透明な袋に入った
    ウサギの形のクッキーが入っていた。


    誰からなのか
    私へのクッキーなのかも、わからない。


    でも…

    一年前の記憶が、鮮明に蘇る。


    『美咲って、イースターが何か知ってる?』

    『ウサギを食べる日かなぁ?』

    『美咲に食べられるなんて、可哀そうなウサギ』

    礼君が、ケラケラ笑って。

    『違うよ。ウサギの形のクッキーとかだよ』

    私が礼君の肩を、ポコポコ叩いたっけ。


    思い出を振り切るように、顔を上げた時

    離れた席に座る礼君と、視線が絡んだ。


    なんで、そんな苦しそうな顔で
    私を見てるの?

    苦しいのは、フラれた私の方なのに…

    きゅん

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  18. 「タマゴに絵を描くなんて、初めてだよ~」

    ルンルンで色を塗る僕の彼女は、可愛い。


    「あっ君のタマゴ貸して」

    「なんで?」

    「ゾルルを描いてあげる」

    「僕のは色だけで…」

    「ゾルルだけじゃ寂しいね
     隣にあっ君も描いてと」

    「だから…」

    「見て、私の絵も描いちゃったよ」


    可愛いでしょ?アハハって
    ツインテ揺らして、微笑んで。

    何でも『楽しい』に変換できるりんりんが
    可愛くてたまんないんだけど。


    「その笑顔、僕がいない所でも
     振りまいてるでしょ?」

    「みんな、私を笑わせてくるんだもん」


    は~

    僕、笑顔ごときで嫉妬してんの?

    我ながら、ダッサ。


    「タマゴ完成。あっ君のお部屋に飾ってね」


    りんりんから受け取ると

    タマゴに『あっ君 大好き』の文字が。


    かぁぁぁ///

    可愛すぎる不意打ち、マジでやめて。

    僕も不意打ちで、りんりんを襲っちゃうよ。

    きゅん

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  19. 四月一日。
    この高校の屋上には、私と青木先輩だけ。
    「今まだ、春休み中だけど?」
    先輩は、優しく微笑んだ。
    「…なんっで…」
    流れてくる涙はしょっぱい。
    「未麻ちゃん、ごめんね。俺、酷いやつだからさ、未麻ちゃんを一人にさせることになるんだ」
    先輩は、寂しそうに眉を下げた。
    私は先輩に抱きつこうとした。
    けれど、先輩に触れることは出来なかった。
    「…ねえ先輩、今日はなんの日?」
    先輩の、温もりが欲しい
    「エイプリルフール、でしょ?」
    私はこくりと頷いた。
    「先輩、嘘でしょ?先輩は、まだ生きてる。そうでしょ?」
    すがった。
    「ごめん、未麻ちゃん」
    その声は、酷く重い。
    「…やだよ…」
    神様は、残酷だった。
    けれど…先輩の唇が一瞬、私の唇に触れた。
    甘くてしょっぱくて、でも甘い。
    「先輩、好き」
    思いが、暴走する。
    「良かった」そう言って先輩は、安心したように笑い、春の風とともに消えた。

    きゅん

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  20. 私は渚。

    軽音部で一緒に活動していた憧れの紫音先輩が、卒業して約1ヵ月。

    会えなくて寂しい気持ちもあるが、一緒に何度もライブしたのは、一生の宝物。

    憧れであり、遠い存在でもあり、私は告白する勇気などなく、紫音先輩は卒業していったわけで……

    春休みの練習帰り、私は後片付けの担当で、最後まで残って戸締まりもして、一人で廊下を歩いていた。

    すると廊下に紫音先輩が一人で立っている。

    「よっ!!」

    「どうしたんですか?」

    「忘れ物をしたから取りに来たんだ」

    「あっ……鍵を閉めちゃったから、開けますね~」

    そう言って後ろを向くと、紫音先輩が、私の背後から抱き締めてきた。

    「鍵を開けなくてもいいよ?俺の忘れ物は、もうここにあるから……」

    「えっ……?」

    「渚に好きって言うの忘れてたからさ?
    付き合ってくれないか?」

    「…………はい」

    4月4日。
    私だけのイースター(復活祭)

    きゅん

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  21. 「はい!これ。イースターエッグだよ!」
    「へえ。キレイだね」

    放課後。彼女は聞こえるように彼に渡した。
    あのエッグは美術の時間に私が作った物。名前を書く前にすり替えられた物だった。

    「…器用なんだね、手先が」
    「そうなんだ。ねえ、それよりも一緒に帰ろうよ」

    私は聞いていられず席を立った時、彼が言った。

    「俺が言ってるのは。盗みが上手だねって意味だけど?」
    「え」

    彼女の顔色に教室が一瞬固まった。

    「楽しい?泥棒って?」
    「し、失礼ね。帰るわ!」

    すると彼は私の腕を取り、誰もいない廊下に連れてきた。

    「返す」
    「どうして私のだってわかったの?」
    「…俺さ。お前のエッグ、キレイだなって思ってさ。そのデザインをパクって同じく塗ったんだ」
    「呆れた」

    彼は頬を染めた。

    「いいだろう?俺とお前の仲だから!さあ、帰るぞ」
    「…うん!いつも…ありがとう」

    彼は今日も優しかった。

    きゅん

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