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  2. 「んー…」

    私が階段を下りていると、航海(うみ)が伸びをしながら階段を上がってきた。

    私達はお互いの存在に気付き、軽く笑みを浮かべながら擦れ違う。

    私の隣に風が吹き、航海の匂いが鼻をくすぐる。

    「ねえ、」

    思わず、私は彼を呼び止めていた。

    「ん?」

    階段を上がっていた彼は、その格好のまま私を見下ろした。

    「あのさ、私達って…これって、同居してるって言うの?」

    同い年の航海だからこそ聞ける、素朴な質問。

    彼は何度か瞬きをした後、笑って口を開いた。

    「僕らは、もう家族じゃん」

    その単語は、私がずっと欲していたもの。

    「それに、僕達は…一緒に住んでるんじゃなくて、一緒に生きてるんだ」

    彼がいつの間にか私に敬語を使わなくなったのは、彼が私に心を開いたから。

    「これからも一緒に生きていこうね」

    彼は私の髪をくしゃりと撫でた後に妖艶な笑みを見せ、階段を上って行った。

    きゅん

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  3. 「瀬奈ぁー」

    ソファーでくつろいでいた私に、声が掛かる。

    「あ、ユンちゃん!お帰りなさい」

    帰ってきたばかりのアイドルオーラ剥き出しの義兄が、私の後ろに立っていた。

    「ただいま」

    「疲れたよね?」

    ユンちゃんの為にと立ち上がろうとした私を、

    「渡す物があるから」

    と、片手で制した彼。

    そして、ユンちゃんはいそいそとバッグを漁り始めた。

    「はい、前のお返し」

    私に渡されたのは、コンビニの袋だった。

    「えっ?」

    「ホワイトデーだから、これ買ったんだけどね…この前の、美味しかったよ。ありがとう」

    「あっ…うん」

    そしてユンちゃんは、私の頭をぽんぽんと軽く撫でて自室へ戻ってしまった。

    そんな彼に、家族だと分かっていてもキュンとしてしまう私。

    袋の中身は、私の大好きな抹茶味のチョコレートだった。

    「…ありがとう」

    そんな私の言葉は、部屋に響いて溶けて消えた。

    きゅん

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  4. 彼-斎藤君-は、真正面から私の目を見て質問した。

    「何で、笑わないの?」

    それは、あまりにも唐突過ぎて。

    「え、ごめん…私、笑ってるけど…?」

    (斎藤君、やめてよ)

    私はいつもの様に笑顔を貼り付けながら、その質問の内容が間違っている事を伝える。

    この笑顔が偽物だなんて、誰にも分からないはずだから。

    そう信じ込んでいた。

    「ううん、笑ってないよ」

    斎藤君は真剣な表情を崩さない。

    「…もう、帰っていい?」

    今までで初めてだった。

    この笑顔が、作っていると気付いた人は。

    けれど、もう遅い。

    私は既に、本当の笑い方なんて忘れてしまったから。


    私の過去に寄り添おうとしてくれている彼は、本当に優しいと思う。


    けれど。

    (怖い…)

    そう思ったのもつかの間。

    斎藤君が、私に向かって近付いてきた。

    きゅん

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  5. 「ねえ、安藤のおすすめの本教えてよ」

    そう、五十嵐は提案してきた。

    「いいけど…」

    (五十嵐、読めるのかな?)

    多少の不安を胸に抱きながら、私は本棚に近寄って文庫本を取り出す。

    「これでいい?…字が小さいなら、変えるけど」

    五十嵐の元に戻った私が尋ねると、

    「うん、大丈夫」

    彼は、にこりと笑って私の手から本を取った。


    「じゃあ、私はカウンターにいるから…」

    そう言い残して、カウンター席に向かおうとすると。

    「あっ、待って!」

    五十嵐は、途端に私の手を掴んできた。

    (えっ!?)

    「あの、さ…俺が読めなかったら、教えて欲しいから…。近くに居てくれない?」

    「……うん、いいよ…」

    けれど、その前に。

    (手を離して…)

    何故か、胸の鼓動が早くなる。

    私はそっと五十嵐の手を離し、彼の隣の席に座った。

    きゅん

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