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  1. 95件ヒットしました

  2. 「今日も大好きな“タクミ先輩”とデートか」
    人の机にドカッと鞄を置いたのは幼なじみの悠平。

    「何で分かったの?てか、鞄!邪魔だし」

    悠平の言う通り、今日はタクミ先輩とデートだ。

    「そんだけ気合い入れて化粧してたら分かんだろ」

    最近の悠平はやたらと冷たい視線を向けてくるから嫌だ。
    「別に、普通だもん」

    悠平は「あっそ」と言うとスマホゲームをし始めた。
    話しかけておいてゲームって、マイペースなやつ。

    「もう!私行くから」
    「お前さぁ」
    振り返ると、相変わらず視線はスマホ。

    「似合ってないよ」
    「…は?」
    悠平はスマホをポケットに入れ立ち上がると、真っ直ぐ私を見て言った。
    「濃い化粧も、チャラチャラした髪型も。お前には似合ってない」

    せっかくセットした髪をクシャとして横を通りすぎた悠平に「ちょっと」と反発すると
    悠平は「俺ならそのままでいいのに。…て思っただけ」と言った。

    きゅん

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  3. 「奥村さん、落とし物」

    私にペンを差し出したのはクラス委員長の柴田君だった。

    柴田君は爽やかで、クールなんだけどちゃんと優しくて。
    話してるとドキドキする。

    「あ、ありが…っ」

    ペンを受け取った時、誰かに背中を押されてつい目の前にいる柴田君の胸にぶつかってしまった。

    「ご、ごめん柴田君」
    「いや、大丈夫?」

    うん、と返事をして、ぶつかってきた相手に視線をやると
    幼なじみの凌平がいた。
    友達と話ながらも目線だけは楽しそうにこちらを見ていた。

    “ バーカ ”
    と口パクで言われたのが分かった。

    「もう!なにあいつ」

    クスクスと頭上から聞こえて顔を上げると、柴田君が凌平を見て笑っていた。

    「好きなんじゃない?奥村さんの事」

    耳元でそう言われて、嫌でも私の顔は熱くなる。

    楽しそうに笑っていたはずの凌平は、今度は真っ直ぐ柴田君を睨んでいる。

    柴田君は「ほらね」と微笑んだ。

    きゅん

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  4. 茶髪に、着崩した制服。勉強する気のないカバン。


    放課後の図書室には…

    うーん。なんともミスマッチだ。



    「…何?」


    彼は読んでいた本から視線を外した。

    ばっちり絡まった視線。

    「えーと、三倉君が図書委員って意外だなと思って」

    「……そういう黒沢も図書委員じゃん」

    「私は、一年の時からずっとだし…図書委員キャラだから」

    彼は「確かにキャラだな」と笑い、また本を読み始めた。


    また観察をしようと横目で三倉君を眺めると、真剣な横顔に少しだけドキドキした。


    そしてあることに気付く。

    「三倉君?本、逆さま…」

    「は?…あ、マジだ」

    今まで読んでいたんじゃなかったのか。

    大きなため息と共に左手で顔を覆った三倉君。

    「仕方ねーだろ」

    「え?」

    「いいなって思ってる子が隣ですげー見てくるから。神経そっちに全部持ってかれてんだよ」


    次に顔を覆ったのは私だった。

    きゅん

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  5. 「まだかなぁ…」
    放課後の教室、黒板に落書きをするのも飽きてきた頃、教室のドアが勢いよく開いた。

    「あれ、夏目?何してんの?」

    そこに立っていたのはサッカー部のユニフォームを着た瀬尾君で、私は一瞬で緊張に包まれた。

    「えっと、友達待ってて」

    「ふーん」と言いながら私の隣まで歩いてきた彼は、黒板を見るなりブッと吹き出した。

    「な…なに?」

    「いや普通さ、動物の絵とかじゃねーの?黒板に落書きするときって」

    確かに私が黒板に書いていたのは、数学の公式だった。
    恥ずかしくて俯く。

    「…俺も書こー」

    瀬尾君が書いたのは、私の漢字フルネーム。

    「私?漢字まで…覚えててくれたんだ」

    彼は頭を掻いた。

    「書けるよ。好きな子の名前くらい」

    数秒後、意味を理解した私は慌ててチョークを手に取った。

    「私も…書けるよ」
    ゆっくりと瀬尾君の名前を書く。

    「ハハッ…すげー嬉しいんだけど」

    きゅん

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  6. 部活の休憩中、顧問の先生に呼ばれてしまい
    急いで職員室に向かった。

    用事は済んだものの、武道場までまたこの道着で
    校舎を通り抜けなければならないのが憂鬱。

    「あれ、夏目?」

    下駄箱で運悪く、クラスメイトに遭遇してしまった。
    しかも相手は私が密かに憧れている棚橋君だった。

    「あ…どうも」

    汗で髪はベタベタだし、最悪だ。

    「夏目、剣道部だったんだ」

    「う、うん。てか、あんまり近くに来ないで」

    「…は?」

    「私、汗かいてるし…」
    私がそう言うと、棚橋君は少し驚いたような表情をしたが
    すぐにハハッと笑った。

    「だからか」

    「え…?」

    恥ずかしくて俯いていた顔を上げると、彼の指先が頬にツーっと触れたのが分かった。

    「汗で髪、食ってる」

    私の頬と唇に汗で張りついた横髪が元の居場所にするんと落ちた。

    同時に私はタコみたいに赤くなった。

    「……どうも」

    「ハハ。顔赤い」

    きゅん

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  7. 今週の掃除当番は窓拭きを自ら志願した。

    「サボってないで手動かせ」

    中庭の掃除をしている憧れの先輩に夢中で、窓を拭く手が止まってしまうのは仕方ない。

    「サボってないし」

    どこかだよ、と呟いた彼はクラスメイトの谷代(やしろ)。

    「ほら、汚れ」
    窓をコンコンと叩く谷代に「はいはい、小姑の谷代君」と嫌味を言ってやった。

    それでも視線が中庭へ向いてしまう乙女心が谷代に分かるか。


    その時、先輩がこちらに気付いて手を振った。

    「えっ」

    すぐに振り返そうと左手を上げたのに
    目の前の窓はカーテンでシャットアウトされた。小姑によって。

    「ちょ、谷代」

    「ん?」

    「ん?じゃないわよ、邪魔したでしょ明らかに」

    「だったら何?」

    「なっ…意味分かんないことしないで」

    「分かるだろ」

    「分かんない。何?」

    「…………言わねぇよ」

    「ほらー、もう!ほんと意味わかんない谷代」

    きゅん

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  8. 「あー、傘無いわ」
    昇降口を出ようとした時、そんな声がして振り向くとバッチリ目が合ってしまった。

    隣のクラスの朝野君。
    人懐っこくていつも彼の回りには人が集まってくる。
    私は中学から一緒だからよく知ってた。

    「ちょうどいいや、吉岡。傘入れてくんない?」
    手元で開きかけてた傘を思わず閉じた。
    「え…私?」
    「うん、私。帰る方向一緒だろ」
    朝野君が笑って私の顔を覗いてきたので一歩引いた。

    男の子と一緒の傘で帰るなんて、恥ずかしくて絶対無理。
    「あ、じゃあ…これ使って」
    持っていた傘を彼の前に差し出す。
    「は?」
    逃げるようにその場を離れようとすると腕を掴まれた。

    「お前、鈍感なの?」
    「え?」
    「折り畳み傘、持ってるから俺」
    「え、どういう…」
    朝野君が私の花柄の傘を開いて陰を作る。
    二人しかいないような感覚になった。

    「こういうこと。…てか、さみー」

    結局二人並んで歩いた帰り道。

    きゅん

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  9. 「アンタわざとでしょ、ほんと悪趣味!」

    いつものように隣で自転車を押して歩く啓介に怒った。

    「は?何が?」

    このすっとぼけた顔も17年見てきた。
    私と啓介は幼なじみ。

    「何がじゃないし、昼休みのアレだし!」

    そう、昼休み。
    廊下を前方から隣のクラスの女子と歩いてきた啓介。
    多分、いや絶対私と一瞬目が合った。

    ニヤって笑ったもん。

    次の瞬間、啓介は隣の女子の髪の毛に触れた。


    「紳士じゃん、ゴミ取ってあげたんだから」
    「ゴミとかついて無かったでしょ!」
    「お前マサイ族かよ。こわー」
    「もう!本当むかつく」
    「アハハ」

    啓介は絶対気付いてる。

    「…てかさ。
    なんでアレでお前が怒んの?」

    私が啓介を好きだって。

    「教えてよ」

    ヤキモチ妬いて怒る私を面白がってるんだ。

    「……一生教えないし」

    「ハハ、一生か。てか、そっちも男と歩いてきたじゃん」
    「え?」
    「お互い様」

    きゅん

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  10. 席替えしてからよく話すようになった隣の席の彼。

    人懐っこくて友達も多く、人見知りな私が心を開くのに時間はかからなかった。

    でも最近の私は何だか変だ。
    彼が他の女子と仲良く話してるのも、
    名前で呼びあったりしてるのも当たり前の光景だったはずなのに
    モヤモヤする。

    「図書委員さーん」

    振り返ると上履きのまま昇降口から外に出てきた彼が
    小走りで私を呼んでいた。
    彼は私を名前で呼ばない。

    そのまま無視して歩みを進めると「ちょ、待てって」と腕を捕まれた。
    「無視すんな」
    「何か用?」
    「もう帰んのかな…って、何怒ってんの?」
    「怒ってないし、今日は塾だから」
    「…じゃあさ、塾サボって一緒に勉強しない?」

    ニッと笑った彼に目を反らした。

    「…しない」
    「えー」
    「他の子誘えばいいじゃない」
    「俺は図書委員さんがいいんだよ」
    「どうして?」
    「そこまで言わせんの?」
    「意味がわかんないよ」

    きゅん

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  11. 新学期が始まって1か月。
    同じクラスだった時は毎日のように話してたはずなのに
    今は廊下ですれ違っても気付かないフリをしてしまう。

    今日も10メートル先に見つけた彼の姿。
    もうすぐすれ違う。


    「…っ」


    ダメだ!

    やっぱり反らしてしまった私の顔には横髪がくっついた。


    クラスが違うってだけで、挨拶がこんなに勇気がいるなんて。


    肩を落としたまま曲がった階段に座り込んだ。
    「はぁ…」
    そのまま両手で顔を覆うと、隣にドカッと誰かが座る音がした。

    「…え?」
    さっきすれ違ったはずの人が座っている。

    「すれ違ったのになんで?って顔」
    彼はいつもの意地悪な顔でそう言った。

    「気付いてたの?」
    「気付くだろ。あんな明からさまに避けられたら」
    「ご、ごめん」
    「…いいけど」
    思わず顔を膝にうずめた。
    「明日からは俺から挨拶するから。避けんのは無しな」

    彼はそう言い私の頭に手を乗せた。

    きゅん

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  12. 部活も引退して進路も決まった。
    この時期、意外と私たち3年生は暇だ。
    だから最近は決まって体育館が空いてればいつもの7人でバスケをしてる。

    でも拓海だけは座って見てる事が多い。

    「ふー!疲れた!拓海もやろうよ」
    座ってボーっとしている拓海に声をかけた。
    「今度な」
    「またそれー?」
    「見てる方が楽しい」
    そう言ってそっぽ向いた拓海に「なにそれ」と呟いた。

    すると後ろから他のメンバーが会話に入った。
    「仕方ないって。拓海が見てんのは試合じゃねーから」
    「どういうこと?」
    「知りたい?」
    「知り…
    「おい、お前何話してんの」
    「ちょ、まじ!ギブギブ」
    近づいて内緒話するような姿勢になった時、
    拓海がもう一人の首に腕を回す技をかけ始めた為
    話が流れてしまった。


    「拓海、試合じゃなくて何見てるの?」
    帰りがけ本人に聞いてみると、頭を掻いた。

    「…鈍くせー、って思いながら見てる。お前を」

    きゅん

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  13. 屋上から校庭を眺めるなんて入学してから初めてだった。

    今日で高校を卒業する。
    寂しくて、心残りがあるような気がした。

    「たそがれてんね」

    急に耳に届いた声に心臓が跳ねた。
    振り返るとついさっき脳裏に浮かんだ人が居る。
    彼の足元には私の卒業証書が転がっていた。

    「…なんでいるの?屋上は出入り禁止だよ」
    「先輩こそ入ってんじゃん」
    「私は今日で最後だからいいの」
    「ハハ、なにそれ」

    この笑顔にも会えなくなる。

    「“会えなくなるの寂しい“って顔だね」
    彼が茶化すように言う。

    「そんな顔してない。てか、それ取ってよ」
    彼の足元を指差す。

    「……自分で取りに来れば?」

    「何なのよ」
    私は渋々、彼の目の前まで近付き
    拾い上げた卒業証書をぎゅっと握りしめた。


    「俺は寂しいんだけど。先輩と会えなくなんの」


    耳元に届いた言葉。

    抱きしめられてる事に気付いたら、涙がこぼれた。

    きゅん

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  14. 「あ!居た…先輩っ」

    15メートル先に見つけた翔太郎先輩の背中に叫ぶ。

    3年の廊下だから、皆さん先輩なんだけれど
    翔太郎先輩は一番に反応してくれた。

    私はそんな先輩の目の前まで走り込み、
    「見てください!これ!」と賞状を広げた。

    「危ね…、あ。…合格?」
    私の圧に先輩は上体を後ろへ反らす。

    「はい!やりました、私!」

    資格取得の為にみっちり指導してくれた翔太郎先輩。
    ぶんぶんと彼の手を握り感謝を伝える。

    「努力は裏切らねーな」
    ポンっと先輩の手が頭に乗った。

    「先輩…」

    何か、感動だ。素晴らしい先輩過ぎて。
    私は思わず抱きついた。

    「廊下なんだけど」

    「先輩、注目の的ですね」

    「………せめて顔隠して」
    先輩は呆れたようにそう言うと
    横向きだった私の顔をボスンっと自分の胸に押しつけた。

    少し息苦しいけど、先輩の柔軟剤の香りが鼻を掠めて
    私は更に強く抱きついた。

    きゅん

    8

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  15. 毎年2/14恒例の調理部のメニューはブラウニー。

    「…上出来かも」

    私は完成したブラウニーを眺めてにんまり微笑む。
    すると調理室の扉がガラッと開いた。

    そこに居たのは同じクラスの馬渕君。
    「馬渕君?何で?」
    こちらに近づいてきた彼。
    いつも女子生徒しか居ない調理室が少し緊張を纏う。

    「匂いにつられてきた。…何これ。超うまそ」

    「ブラウニーだよ。バレンタインだから、調理部で作ったの」

    「ふーん。誰かにやんの?」

    「私は…自分で食べるだけ」

    そう答えると馬渕君がこちらを見て、ブハッ、と吹き出した。

    「え?失礼だよ」

    私は馬渕君を軽く睨んだ。


    「いや、悪い悪い」

    馬渕君が私の目の前で向かい合って立ったので見上げると、
    彼は、ふっと微笑んだ後で
    ブレザーの袖で私の鼻先と左頬を擦った。

    「粉すげーついてるから」

    彼の汚れた袖と、無邪気な笑顔に
    私の心臓が音を立てた。

    きゅん

    26

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  16. 部活が終わり残ったのは先輩と私だけになった。
    2月の体育館は寒い。

    「やっと食える」

    嬉しそうに床に座り込んだ先輩は
    朝に私が渡したチョコの包装をビリビリと開けた。

    せっかく可愛くラッピングしたのに…
    と思ったけれど子供みたいな先輩の笑顔を見ていたら
    まぁいいかと思えた。


    少し歪なトリュフが1粒、大好きな人の口に運ばれる。

    「先輩、どうですか?」
    そう聞くと先輩はチラリとこちらを見た。

    「味見してみる?」
    「え?」
    ゆっくりと先輩の顔が近づき、唇が触れた。
    離れた先輩を見上げるといつものように意地悪に笑っていた。
    私の顔は赤いのに。

    「どう?」
    「あ、甘い…です」
    恥ずかしくなって俯くと、頭上でふっと笑われた。
    その瞬間私の身体は先輩に包まれる。

    「先輩、好き」
    いつも自分から言えないのに、思わず言葉が出た。

    「………不意打ちで素直になるなよ」

    先輩の耳が、赤い。

    きゅん

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  17. 「おはよ」
    「おー」
    後ろの席の加藤君にいつものように挨拶を済ませて
    机の横に鞄を掛けた。
    おーって挨拶になるのか。

    彼はスマホでゲーム中らしい。

    「荷物少なくね?」

    そのまま席に座ろうとしたとき、加藤君がからそんなことを言われ
    彼の方を見たけれど視線はスマホを向いたまま。
    話し掛けておいて失礼な人だ。

    「いつも通り」
    「バレンタインにいつも通り来てどうすんの?
    チョコは?」
    「教科書、ノート、筆箱。それ以外無いわよ」
    「ハハ、まじでいつも通り」

    ようやく顔を上げた彼の机の横の鞄には既にいくつかのチョコが入っていた。

    「学校来るまでで6個」
    聞いてないのにご丁寧だ。
    私は「良かったね」と返事をした。

    「…良くはねーよ」
    「え?」
    「欲しい子から貰えない」
    哀れんだ目で加藤君を見つめると
    はぁ、と盛大なため息と同時に彼の大きな手が私の頭に乗る。

    「鈍感過ぎてムカつくな」

    きゅん

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  18. 上履きに履き終えると、脱いだ革靴を下駄箱に入れる。
    その扉を閉めると同時に、私の右斜め上の下駄箱の扉が開く。
    加納君だ。

    「おはよ河西」

    見上げるとすぐ近くに加納君の整った顔があって
    思わず下を向いて挨拶を返した。

    「…あっ、おはよ」

    少しだけ、笑われたような気がした。

    「朝早いんだな」

    「私、早起き好きなの」

    「ハハ。羨ましい」

    「加納君は?いつもこんなに早いの?」

    「まさか。どちらかというと朝、苦手。
    今週は部活の当番」

    「あぁ、なるほど。がんばってね」

    「おー。でも来週も早く来よーかな」

    「え?」

    「また河西とこうやって教室まで歩けるなら
    早起きも悪くねーな、…って思った」

    真剣な顔をしていたと思ったら
    すぐにヒヒッとおどけて笑ってみせた加納君に
    私は「からかうのは良くないと思う」と言っておいた。

    でも、次の週もその次の週も、彼は早起きをしてくれました。

    きゅん

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  19. 「陸!一緒に帰ろ」
    校門で見つけた見馴れた後ろ姿に声をかけた。

    隣に並んだ私を一目し「声でか」と前を向き直した彼とは
    幼なじみで家も近所だから一緒に帰ることも多い。

    しばらくすると後ろからまた誰かが陸を呼んだ。

    振り返りその姿を確認した陸は「…最悪」と呟いた。
    襟元の線の色を見て先輩だと分かったので軽く会釈をすると
    「あ。あかりちゃんも一緒?ラッキー」
    とその人は言った。

    なぜか名前を知られていた。

    「この間は急にごめんねー、そりゃ嫌だよね。顔も知らない奴に連絡先聞かれても」

    え?何の話?
    先輩の話に着いていけず陸を見る。
    先輩も私の反応を見てあれ?という表情だ。
    「え。陸、お前聞いたんだよな?あかりちゃんに」

    どうやらこの先輩は陸を通して私と連絡先交換しようとしたみたい。

    「いや…」

    そして陸は私に聞かずに勝手にお断りしたようだ。

    「俺が嫌だったんで、すんません」

    きゅん

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  20. 改札の外はすっかり暗くなっていた。
    冷えた指先をこすりながら家路を急ぐ。
    「美琴」
    聞きなれた声に振り向く。
    「慧!あれ、部活…」
    「テスト週間だから早いんだよ」

    早いといってももう20時
    いつもどんなに部活を頑張っているかが分かる。

    「そうなんだ」

    慧と話すのが久々で妙に緊張した。
    私は県内1の進学校。
    慧はスポーツ推薦で隣町の高校。
    中学を卒業してからほとんど顔を合わせることは無かった。
    家は隣同士なのに。

    「美琴いつもこんな時間?遅くね?」
    「今日は塾だったから」
    「あぁ、なるほど」

    暫くの沈黙がすごく長く感じる。

    ふと、頭にポンッと乗った温かさ。
    「背、ちっさ」

    慧が私を見下ろしている。

    「……うるさいよ」
    昔はあんなに小さかった慧。

    いつの間にこんなに大きくなったのかな。

    街灯に伸びた二つ並んだでこぼこの影がくすぐったくて。
    今日はいつもよりゆっくり歩いた。

    きゅん

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  21. 『なんで分かってくれないの?
    言わなくても分かるだろ
    言葉にしなきゃ伝わ…「お前なぁ」

    目の前で勉強していた背中が呆れたようにこちらを振り返る。

    「漫画を音読すんのやめろ」
    「え、なんで?感情移入だよ」
    「そんな歯の浮くセリフ誰も言わねえよ」
    「真面目だなぁ恭平は」

    放課後よく隣の恭平の家へくつろぎに行く。
    真面目な彼の家には漫画なんて置いてないから持参して。
    昔からそんな風に過ごしてきた。

    「本当好きだなこういう漫画」
    私の隣に座り、積まれた漫画をパラパラとめくる恭平。
    「女子の憧れが詰まってるの」
    「…ふーん」

    私はまた音読を続ける。
    『言葉にしなきゃ伝わんないよ!
    言葉にするって何を。
    好きって言…「好きだよ」


    え?


    「好きだよ。ずっと」



    隣の恭平が真剣な顔で私を見ていた。

    「恭へ…」

    「バーカ。音読しただけ」


    うそ。"ずっと"なんて、書いてないよ?

    きゅん

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