ようこそゲストさん
-
キーワードか作家名を入力してね
9件ヒットしました
「なぁ、お前って彼氏いんの?」
休み時間。不意に前の席の男子に絡まれた。
「なんで唐突にそんな話題なの?」
「今日はホワイトデーだし、お前に返される予定はあるのかな~って。」
「余計なお世話。」
ニヤニヤと笑いながら聞いてくる男子をテキトーにかわす。
「そんなだからモテねーんだよ。」
そう言い返され、何か言い返そうとしたが、後ろから回ってきた手が私の口を塞ぎ、声を出せなかった。
「!?」
驚いて振り返ると、幼馴染の北斗と目が合う。
「やっほー果歩。これ、お返しね。」
女子から人気の高い、整った顔と明るい笑顔。
さっきまで私に絡んでいた男子は目を点にしていた。
「ほ、北斗……なんだそれ、牽制かよ。」
笑顔を取り繕う男子に、北斗は私を後ろから抱きしめながら言う。
「牽制?必要ないでしょ。俺らは小さい頃から両想いなんだよ?」
楽しそうな北斗に私が顔を赤らめてパンチをするのは二秒後であった。
三崎咲さんをフォロー
「お返し……ぇえ!?」
思考が追い付かず叫ぶ私に、後輩の水野くんは慌てて付け足す。
「その…先輩が部員全員に対してくださったのは分かってるんですけど、お返しはしたいな…って。先輩にはお世話になってますし…。」
私は有頂天だった。
バレンタインにかこつけ、マネージャーの立場を利用し部員全員に配ったチョコレート。
水野君の分だけ明らかに量もラッピングも違ったし、私が水野君ラブなのを知っている他の部員は呆れ顔だった。
水野君に渡せただけで舞い上がっていた私は、ホワイトデーを失念していた。
「ありがとう水野君!もう私、死んでもいい!」
一人で興奮している私は、やがて水野君の顔が赤いことに気付く。
「…水野君?顔、」
「あの、俺も、チョコ、嬉しかったです、では!」
まくしたて、足早に体育館を去る水野君。
その様子をこっそり見守っていた部員たちは、この二人が進展するのはまだ先だとため息をついた。
三崎咲さんをフォロー
「はい遅刻。」
駅から高校まで約一キロ。
必死で走った努力は実らず、遅刻チェックの水野先生は同情ゼロといった感じだった。
「ギリギリ…セーフ…です…よねっ…。」
「ギリギリアウトですね。三日連続ご苦労様。」
先生の嫌味が私の胸に突き刺さる。
もう少し優しくしてくれてもいいのに。
水野先生はカッコいいし授業も分かりやすくて人気だけど、意地悪だから私は嫌いだ。
私は呼吸を整えてから先生に噛みつく。
「明日は誰よりも早く来て見せますよ。」
「それは昨日も言ってましたよ。」
まったく、とため息をついて先生は私の方に向き直る。
ふわり、と朝の風が、ぼさぼさの私の髪をなびかせた。
「明日遅刻したら、俺の教科の単位あげませんよ。」
「え、ペナルティ重くないですか…?」
顔を青くする私に、呆れたように笑う。
「バーカ。半分冗談だよ。」
バカにしたように私の髪をなでた。
「……半分本気なんですか?」
三崎咲さんをフォロー
「ごめん綾、掃除当番だったの忘れてた!」
ちょうど掃除が全部終わり、ゴミ袋を結んでいたところにやってきた彼。
明るくクラスの人気者で、私の幼馴染でもある北斗だった。
「遅い。もう全部終わったよ。」
冷たく言うと、「ごめんってば」と笑いながら謝る。
私が怒っていると思ったのだろうか。
「いいよ。どうせまあた告白されてたんでしょ。」
北斗がさっき、隣のクラスの女子に呼び出されていたのは知っている。
掃除当番を忘れていたというのも嘘だろう。
案の定、的を得ていたらしく、北斗は苦笑いを浮かべた。
「綾はエスパーだね。」
その端正な顔で微笑んだ……と思ったら
「え、ちょっと、北斗っ!?」
突然、私の手を引いて私を抱きしめた。
誰もいない教室に、緊張した空気が流れる。
北斗は、あわあわとする私を抱きしめながら告げた。
「…そこまで見抜いてくれてるならさ、いい加減俺の気持ちにも気付いてくれない?」
三崎咲さんをフォロー
「最低。」
女子生徒から貰った手紙やらプレゼントやらを、業務用のゴミ袋にまとめた俺を見て
うちのクラス委員長・宮野は冷ややかな視線を向けてきた。
「うるせぇな。知ってるよ。」
今日は俺の誕生日だった。
何処からそんな情報が漏れたのか、生徒達が誕生日プレゼントをくれたわけなのだが。
「電車通勤の俺にこれ全部持って帰れって言うのか。」
白いポリ袋に全て入れて、口を結ぶ。
宮野はもう一度、最低と呟いた。
「なんで皆、先生に惚れるんでしょうね。酷い人なのに。」
「その酷い教師に一番惚れてるのはお前だろ。」
少し煽れば、すぐ頬を赤らめる。
どこまでも純粋な子だった。
「宮野、俺はこーいう奴なの。心優しいお前とは不釣り合いだろ。」
気をつけて帰れよ、と言い残して教室を出る。
教室の中から、「嘘つき」と呟く声が聞こえた。
三崎咲さんをフォロー
部活終わり。
教室に荷物を取りに行く途中、廊下で私の幼馴染が告白されている現場に遭遇した。
「私と付き合ってください。」と顔を真っ赤にして言った女の子に対して、
「ごめんだけど興味ない。」なんて激ドライな返しをした透に冷ややかな視線を送った。
「ひっどい。」
女の子が泣きながら立ち去ったあとで、私は透に言う。
私がいたことに特に驚いた様子もなく、うるさいと言う彼。
「もっと優しくしてあげたらいいのに。」
名前も知らないあの女の子に同情してしまう。
私も透が好きだから。
透は昔からモテて、告白される度、ひどい振り方をしているのを私は見てきた。
私だってきっと、告白したら冷たい言葉で突き放されるのだろう。
「好きでもないやつに優しくできない。」
透の目が、私を捉える。
「アイツらに優しくできる訳ないじゃん。俺はお前がずっと好きなんだから。」
三崎咲さんをフォロー
どおん、と大きな音とともに
色鮮やかな花火が夜空に輝いた。
うちの高校の後夜祭は、この花火で幕を閉じるのだ。
屋上から下を見下ろすと、きゃーきゃーと騒ぐ大勢の生徒がいた。
「近所から毎年苦情きてんのによく続けられるよな。」
校庭で騒ぐ生徒とは真逆に
私の横でスマホ片手にぼんやりと花火を眺める潮田先生。
なんで私は、友達でも彼氏(いないけど)でもなく
この毒舌養護教諭と花火を見なきゃいけないんだ。
「なんで先生、こんなとこにいるんですか。」
「そりゃこっちの台詞だ。生徒は屋上立ち入り禁止だろ。」
こちらに目も向けず、吐き捨てるように言う。
友達が好きな人を後夜祭に誘うと言うので、気を遣ってここへやってきたのだが
こんなことなら友達のところにいれば良かったと後悔。
「まぁ感謝しな。俺と花火見れたんだから。」
軽口を叩く先生の横顔が、打ち上げられた花火の光で七色に光った。
三崎咲さんをフォロー
「どんくさ。」
火傷をした私の指を横目に、吐き捨てるように言うのは養護教諭の潮田先生。
「怪我してる生徒によくそんなこと言えますね。」
我ながら生意気な口を叩けば完全スルー。
なんなんだ、この先生は。
潮田先生は、その顔立ちのためにファンの生徒も多い。
この前の体育祭でも
応援席よりも救護席が盛り上がっていたくらいだ。
けれど、私は苦手。
この人のペースに乗せられるのが嫌。
「女の子なんだから、指は特に大切にしな。」
そう言って私の頭を軽くなでる。
「結婚するとき困るよ?」
作り物のような笑顔を私に向ける。
こういうことをするから、女子生徒が群れるのだ。
乗せられまいとその手首をつかむ。
「セクハラで訴えますよ先生。」
「安心しな。高校生なんてガキに興味はない。」
ホントに、嫌な先生。
三崎咲さんをフォロー
先輩は優しくない。
「下手くそ。」
私が一時間、集中して書いたデッサンを見てそう呟く。
何か言い返してやろうと先輩のデッサンを覗こうとすれば
邪魔、と言って追い返される。
活動部員が先輩と私しかいないこの美術部の主導権は
言うまでもなく先輩が握っているのだ。
「もう下校時刻だ。さっさと片付けて鍵返してこい。」
たまには先輩が返しに行ってくれてもいいのに。
なんて口に出さず、はいはいと頷いて美術室の鍵を受け取る。
「無駄話すんなよ。待ってるから。」
教室を出たところで先輩が言う。
「え?」
「帰るでしょ。一緒に。」
私の彼氏は優しくない。
だけど、温かい人だ。
三崎咲さんをフォロー
きゅんができる!
本当に解除しますか?